28.剖検にて多臓器転移を認め、胃、小腸、大腸にも転移を有した4型大腸癌の1例

症例は39歳男性、主訴は腹部膨隆、腹痛。2007年8月より腹部膨満感を自覚、9月になり、腹部膨隆、体重増加、腹痛、食欲不振が出現し近医を受診。腹部超音波検査で腹水を大量に認め精査目的に某院紹介。同院のCTで上行結腸の腫瘍性病変、リンパ節腫大、腹水があり、同月当科紹介入院。腹部は著明に膨隆し、血清CEA 105 ng/mlと上昇していた。大腸鏡検査では上行結腸全体に全周性に狭窄を有する易出血性の粗造な粘膜面を認め、生検で低分化型腺癌であった。遠位結腸には白色調の隆起が散在し、同部からの生検でも癌を認めた。上部消化管内視鏡検査では、胃および十二指腸にも大腸と同様な白色調の隆起が散在し生検で癌であった。CT検査では胸水、大量腹水、腹部リンパ節腫大があり、腹水の細胞診で腺癌を認めた。以上より４型大腸癌、多発リンパ節転移、癌性胸腹膜炎と診断した。化学療法を検討していたが、第4病日に脳梗塞を発症し第12病日より39℃台の発熱があり、血液培養でS.aureusを認めた。その後全身状態が悪化し第16病日に死亡した。剖検では、上行結腸原発の４型低分化型腺癌で、肺、肝、両側副腎、脾、膵、食道、胃、大腸、骨髄、心臓、左鎖骨上窩リンパ節、両側肺門部リンパ節、肝門部リンパ節、腹部大動脈周囲リンパ節、腸間膜リンパ節に転移を認めた。胃、小腸、大腸の粘膜面にも転移を認めた。

４型大腸癌で消化管にも広範囲に転移をきたし、その内視鏡像が興味深いと考え、文献的考察を加え報告する。