日本消化器内視鏡学会甲信越支部

27.Double balloon endoscopyで発見したMeckel憩室出血の一例

山梨大学第1内科
渡部伊織、高野伸一、吉田貴史、大塚博之、佐藤 公、榎本 信幸
北原内科クリニック
北原史章
山梨県立中央病院
小林美有貴、小嶋裕一郎

症例は28歳女性、主訴は血便と下腹部痛。1999年(19歳)、2007年8月(27歳)に血便を認め、他医で上部・下部消化管内視鏡検査を施行したが出血源を認めず、カプセル内視鏡では下部小腸にびらんを認めた。2007年11月25日、3度目の血便を認めA病院に救急搬送された。小腸内視鏡検査で回腸にびらんを認めAPC焼灼を施行されたが、2008年2月7日(28歳)に4度目の血便排泄と下腹部痛を認め、精査加療目的にて当院入院となる。

入院後の精査で、CT、上部・下部消化管内視鏡検査、腹部血管造影では異常を認めず、出血シンチでは回腸からの出血が疑われた。メッケル憩室シンチでは明らかな異常は認めなかったものの、下部からのダブルバルーン小腸内視鏡検査で回盲部から約80cmの回腸に憩室を認め、その入口部に潰瘍瘢痕及び出血を認めた。その他異常を認めず、憩室の位置と出血シンチでの集積がほぼ一致していることから出血源と断定した。外科にて小腸部分切除を施行し、病理組織の結果では、憩室内に約5mmほどの領域に異所性胃粘膜を認め、メッケル憩室と診断された。

従来診断が困難であった小腸出血に対して、近年カプセル内視鏡やダブルバルーン小腸内視鏡が有用とされている。今回、その診断にダブルバルーン内視鏡が有用であったメッケル憩室の一例を経験した。本症例ではカプセル内視鏡でその病変を指摘できず、各モダリティーの特性を理解した上で診断していくことが重要と考えられた.