日本消化器内視鏡学会甲信越支部

26.カプセル内視鏡とダブルバルーン小腸内視鏡を用いて術前診断しえた小腸原発T細胞性悪性リンパ腫の一例

信州大学医学部 消化器内科
竹中 一弘、長屋 匡信、武田 龍太郎、須藤 貴森、市川 真也、張 淑美、白川 晴章、北原 桂、高山 真理、新倉 則和、田中 榮司
信州大学附属病院 内視鏡診療部
赤松 泰次
信州大学医学部 消化器外科
村中 太、荻原 裕明、石曽根 聡

症例は 61歳の男性.人間ドックにて便潜血陽性指摘され、H19年11月に他院外来を受診し上下部消化管内視鏡検査が施行されたが異常を認めなかった。しかし貧血と腹部CTにて終末回腸の壁肥厚を指摘され、同月当科外来を紹介受診された。来院時現症では胸腹部に異常所見を認めず、血液検査ではHb 7.7g/dlの貧血とsIL-2R 1386 U/mlと高値がみられた.カプセル内視鏡及びダブルバルーン小腸内視鏡検査を施行した所、回腸に全周性の潰瘍性病変を認め、腫瘍により同部は狭小化し、腫瘍辺縁は粘膜下腫瘍様の変化を伴っていた。また主病変とは別に、一部の小腸粘膜で絨毛が腫大し、粘膜の粗造な部位が散見された。主病変及び、粗造粘膜部からの生検にてPeripheral T-cell lymphomaと診断された。各種画像検査にて小腸以外への悪性リンパ腫の浸潤を示す所見は認めなかった。化学療法により小腸全周性病変の穿孔・狭窄の危険があるため、H19年12月に主病変に対し外科的切除を行った後、現在化学療法を施行中である。