日本消化器内視鏡学会甲信越支部

24.当科における腸管術後症例に対する処置用ダブルバルーン小腸内視鏡を用いたERCPの経験

信州大学医学部附属病院消化器内科
張 淑美、児玉 亮、尾崎弥生、高山真理、浜野英明、新倉則和、田中榮司

[背景]Roux-en Y再建を用いた腸管術後症例ではしばしば吻合部狭窄、肝内結石などを合併し、治療を要することがある。それらに対する内視鏡的アプローチとして従来細径大腸スコープやオーバーチューブ併用前方斜視鏡を用いる等の工夫が為されてきた。しかしその成功率に比し、消化管穿孔等の偶発症の頻度が高いため普及してこなかった。当院では生体肝移植後の胆管空腸吻合部狭窄に対し、ダブルバルーン小腸内視鏡(DBE)を用いた処置を試みてきたのでその成績につき報告する。

[対象と方法]2006年5月から2007年12月までに5例8件に対してDBEを用いたERCを試みた。既往手術の内訳は肝内結石、先天性胆道拡張症、良性胆道狭窄に対する胆管空腸吻合術3例、肝細胞癌に対する生体肝移植+胆管空腸吻合術1例、胃癌に対する胃全摘+Roux-en Y再建1例。目的処置は肝内結石截石術4例、吻合部狭窄拡張術1例、ステント抜去1例。フジノン社製EC-450BI5を使用し、仰臥位にて適宜用手腹部圧迫を加えつつ挿入した。

[結果]吻合部もしくは乳頭までの到達率は6/8件(75%)、また目的処置の成功率は2/8件(25%)であった。2症例は到達不可能であり、強い癒着及びスコープの有効長不足が原因と考えられた。処置不成功例の内訳はステントが空腸壁内迷入により抜去を断念した1例と目的肝内胆管に挿管困難な1例であった。

[考察]スコープ挿入率が良好である一方で処置の成功率は低かった。Roux-en Y再建症例ではB-II症例と同様にVater乳頭が逆向きになるため、胆管とスコープの軸を合わせるのが難しいこと、胆管空腸吻合術狭窄症例では吻合部で肝管が泣き別れ状態を呈するため肝内結石存在枝への挿管が困難であることが原因と考えられ、内視鏡治療の限界と考えられた。

[結論]腸管手術を施行されたERC困難症例に対してダブルバルーン小腸内視鏡は挿入には有用と考えられるが、処置成功率を改善するために更なる工夫が必要である。