日本消化器内視鏡学会甲信越支部

22.診断に苦慮した混合型膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の一例

佐久総合病院 内科
浜内 諭、高松 正人、古武 昌幸、比佐 岳史、大瀬良 省三
佐久総合病院 外科
大久保 浩毅
佐久総合病院 放射線科
植田 瑞穂

〔症例〕60歳代、男性。急性膵炎にて入院となり保存的加療にて軽快した。EUS、CT、MRCPを施行するも、主膵管の軽度拡張(2〜3mm)のみであった。膵炎発症2年6ヵ月後に上腹部痛にて再診となった。US、CT、MRCPにて主膵管径の増大(4〜5mm)を認めたが明らかな腫瘤性病変は指摘できなかった。EUSでは拡張した体部主膵管内に長径14mm大の内部不均一な低エコー腫瘤を認めた。ERPでは十二指腸主乳頭からの粘液排出と主膵管内粘液を認めた。また体部主膵管に不整な狭窄像を認め、同部位のIDUSでは主膵管及び拡張分枝膵管内に充満する乳頭状の低エコー腫瘤を認めた。以上の画像検査及び生検所見より、混合型IPMN(腺腫以上)と診断し、膵体尾部切除術を施行した。固定切除標本では体部主膵管及び分枝膵管内に充満する径2×1.4cm、白色調の乳頭状隆起を認めた。組織学的にIPMN境界悪性病変と診断した。

〔考察〕画像を再検討すると、初回EUSにて膵管内の低エコー腫瘤を指摘可能であった。軽度の主膵管拡張を認めた場合、本例のような主膵管や分枝膵管の著明な拡張を伴わない、膵管内に充満するIPMNを念頭に置く必要があると考えられた。