日本消化器内視鏡学会甲信越支部

17.急性胆嚢炎の再発予防のため、経皮経肝胆嚢鏡(PTCCS)を用いて内視鏡的経乳頭的胆嚢ドレナージ(ETGBD)を施行した1例

新潟労災病院 内視鏡診療センター
前川 智、麻植ホルム正之、森 健次、太幡敬洋、合志 聡

急性胆嚢炎の再発予防のため、胆嚢摘出術が一般的によく行われている。しかし、高齢あるいは重度の心疾患等の基礎疾患のため、手術不能となる症例も少なくない。今回、我々は胆嚢結石を合併した急性胆嚢炎に対し、経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)施行後、急性胆嚢炎の再発予防のため、経皮経肝胆嚢鏡(PTCCS)を用いて内視鏡的経乳頭的胆嚢ドレナージ(ETGBD)を施行した。症例は77歳、男性。2007年11月21日より右季肋部痛、頻回の嘔吐を認め、24日当科受診。血液検査上著明な炎症反応を認め、腹部CTで胆嚢頚部に結石が嵌頓し、胆嚢腫大・胆嚢壁の肥厚を認めることから、胆嚢結石合併胆嚢炎と診断し、PTGBD施行。その後自覚症状・炎症反応はともに改善した。胆嚢結石に対し外科治療を考慮したが、重度の心疾患があり、手術不能と判断された。当センターでは手術不能の胆嚢結石合併胆嚢炎の症例に対し半永久的なETGBDステント留置を試みており、本症例においては、胆嚢結石の嵌頓の予防の目的で、PTCCS(Olympus Medical Systems社製BF-XP260F, 先端外径2.8mm)を用いてETGBDステントの挿入を行った。方法はPTGBDの瘻孔を7Frから12Frまで拡張した上で、胆嚢内にPTCCSを挿入し、直視下で胆嚢管から総胆管へガイドワイヤーを誘導し、そのガイドワイヤーをファーター乳頭から出し、十二指腸まで挿入した側視鏡(Olympus Medical Systems社製JF-240)内に引き込むことで、経乳頭的に胆嚢内にダブルピッグテールステント(7Fr,15cm)を留置した。その後の経過は良好で、2008年3月現在急性胆嚢炎の再発を認めていない。これまでPTCCSを用いたERCP関連の手技の報告はないが、今後ERCP施行困難例における総胆管結石の除去においてもPTCCS補助下にERCPを再施行し、結石除去術を行う等応用できる可能性があり、非常に有用な方法と思われた。