日本消化器内視鏡学会甲信越支部

16.術前診断で腺腫成分が判明した非露出腫瘤型下部胆管腺腫内癌の1例

NHO まつもと医療センター松本病院 消化器科
宮林秀晴、松林 潔、羽場 真
同 内科
古田 清
同 外科
赤羽 康彦、中川 幹、小池祥一郎
同 研究検査科
中澤 功

症例は72歳・男性。主訴は右上腹部痛。腹痛が持続するためF医院を受診。同院の腹部超音波で肝内胆管および胆嚢の拡張が認められ、胆管閉塞が疑われたため当院へ紹介。軽度の黄疸と肝胆道系酵素の上昇が認められたため胆道系精査のため当院へ入院となった。当院での腹部超音波・CTでも胆管系の拡張と胆管末端の腫瘤が疑われた。ERCPでは胆管の拡張と胆管末端の狭窄が疑われたため十二指腸乳頭切開術(EST)を施行。EST直後腫瘍は認められなかったが、バルーンカテーテルで病変を引き寄せたところ赤色調絨毛様の病変の一部が開口部に露出した。同部位の鉗子生検を行い、胆管ステントによるドレナージを行った。生検組織診では絨毛状腺腫の診断であった。病変進展の検索のため十二指腸からのEUS、胆管内からのIDUSを行い、膵内胆管内の腺腫成分を含む腫瘍性病変と胆嚢管起始部までの管腔内進展が疑われたため膵頭十二指腸切除術を行った。肉眼所見は胆管末端に限局した直径1.5cm程度の腫瘤であった。組織学的には腺腫成分を含んだ高分化腺癌(pap>tub1)であり脈管侵襲・リンパ節転移・周囲臓器への浸潤を認めない非露出腫瘤型の粘膜内癌であった。本症例ではESTとバルーンカテーテルによる腫瘤露出が診断および組織採取において有効であった。一方、超音波内視鏡による進展度診断においてはステント挿入の影響があり、表層進展を深読みしたことが反省点であった。