日本消化器内視鏡学会甲信越支部

12.特異な形態を示した消化管原発Follicular lymphomaの一例

信州大学医学部付属病院 消化器内科
市川真也、長屋匡信、須藤貴森、児玉 亮、武田龍太郎、竹中一弘、張 淑美、北原 桂、白川晴章、金子靖典、田中榮司
同 内視鏡診療部
赤松泰次
飯田市立病院 消化器科
中村喜行

症例は71歳男性。2001年に前医で右肺癌を指摘され、術前精査目的の上部・下部消化管内視鏡で十二指腸、終末回腸に白色顆粒状の変化を認め、生検でMALTリンパ腫と診断された。肺癌手術後、除菌療法が行われたが内視鏡所見に変化はなく、定期的に経過観察されていた。2007年に施行された内視鏡検査で十二指腸病変の増大傾向を認めたため、当院紹介となった。上部消化管内視鏡所見は、十二指腸下行脚に広範囲に白色絨毛様変化を認め、下十二指腸角付近は絨毛の白色変化に加えて、発赤隆起性病変を認めた。病理組織所見で白色絨毛様病変部は、Follicular lymphoma grade 2と診断された。発赤隆起性病変は異型リンパ球が濾胞構造を形成せず一部に大型の細胞が目立ち、形質転化の移行像と考えられ、Diffuse follicle center lymphoma grade 2と診断された。カプセル内視鏡、ダブルバルーン小腸内視鏡を施行したところ、上部空腸・回腸には白色顆粒の集族を認め、病理組織所見でFollicular lymphoma grade 2の所見であった。腹部造影CTにて腸間膜内および傍大動脈周囲に腫大リンパ節を認めた。PETでは十二指腸下降脚から水平脚移行部、リンパ節に集積を認めた。以上より、Lugano国際分類stage U2と診断し、R-CHOP療法を開始した。R-CHOP 1クール後の上部消化管内視鏡では十二指腸の白色絨毛様変化、発赤隆起性病変も消退傾向を認め、現在化学療法中である。消化管に発生するFollicular lymphomaは通常白色顆粒状病変として認められることが多いが、本症例は特異な形態を示したため報告する。