日本消化器内視鏡学会甲信越支部

11.腹部大動脈瘤十二指腸穿孔の2例

新潟市民病院消化器科
林 雅博、古川浩一、河久順志、濱 勇、横尾 健、相場恒男、米山 靖、和栗暢生、杉村一仁、五十嵐健太郎、月岡 恵、病理科 橋立英樹
呼吸器科
鈴木信明、感染症科 塚田弘樹、心臓血管外科 中澤 聡、羽賀 学、渡辺マヤ

【はじめに】腹部大動脈瘤十二指腸穿孔はまれであり、異なる成因を背景とする2例を経験したので報告する。【症例1】83歳、女性。【既往歴】脳出血・脳梗塞後遺症にて特別養護老人ホーム入所中。経鼻胃管での経管栄養。平成18年に肺結核治療歴有。その後排菌認めず無治療。【現病歴】平成19年3月施設内にて吐血。当科へ救急搬送され当科入院。【入院経過】血圧低下、意識消失あり、上部消化管出血疑いにて緊急上部消化管内視鏡検査(以下EGD)施行。胃内に多量の凝血塊を認めるものの十二指腸下行脚までの検索では出血源なし。出血シンチより腹部大動脈瘤と小腸出血が疑われた。しかし、ADL不良で小腸検査や外科的治療は希望されず、入院第6病日の再出血で永眠。【剖検所見】感染性腹部大動脈瘤、肝肺粟粒結核および動脈瘤のトライツ靭帯部で十二指腸に穿孔を認めた。【症例2】72歳、男性。【既往歴】平成16年9月腹部大動脈破裂にて当院心臓血管外科でIグラフト。未破裂脳動脈瘤にて当院脳外科通院。【現病歴】平成19年7月より8月まで繰り返す下血あり。2回のA病院入院精査では出血源不明にて退院。9月21日大量吐下血あり、当科へ救急要請あり入院。【入院経過】同日出血シンチ実施。腹部正中の小腸動脈付近で経時的な濃染所見有。腹部大動脈瘤十二指穿孔が疑われ心臓血管外科入院。しかし、感染動脈瘤の増大あり手術救命は困難と判断。しかし、他疾患による小腸出血の可能性を検索するため当科転科し術中EGDを実施。十二指腸水平脚、椎体を乗り越えた部分で穿孔部を確認。心血管外科にて待機手術のために一時閉腹、ICUへ転出となる。再手術前日に再出血、心停止となるが蘇生し、緊急手術にて大動脈婁孔閉鎖。しかし、DIC、ショック状態継続し同日永眠された。