日本消化器内視鏡学会甲信越支部

10.ラピッドシステム(short guide wire)での経鼻内視鏡下イレウスチューブ挿入法

独立行政法人 労働者健康福祉機構 新潟労災病院 内視鏡診療センター
合志 聡、麻植ホルム正之、前川 智、森 健次、太幡敬洋

【目的】イレウスチューブ挿入において経鼻内視鏡下に挿管することで短時間で確実に挿入でき、患者への苦痛、放射線被爆量の点からなども有用性が数多く報告されている。しかし腸管減圧目的であるために、イレウスチューブは総長300cmと長いチューブであり、それを内視鏡挿入後からガイドワイヤ(GW)を介して挿入するには、450cm以上のGWが必要となり、操作の面などで非常に煩雑になる。今回、住友べークライト社と共同でshort guide wireでのイレウスチューブ挿入キットを開発し、検討したので報告する。【対象と方法】腸閉塞患者22名(男:17名、女:5名)、平均年齢70.6±11.9歳に対して文書による同意を得て施行。使用内視鏡はGIF-N260(オリンパスメディカルシステムズ社)で、スプレー法による鼻腔内前処置を行い挿入。胃、十二指腸内の胃液、腸液を吸引しながら、十二指腸水平脚まで挿入した後に親水性GW(0.049インチ、350cm)を鉗子孔より挿入して、内視鏡先端から出たGWをループテクニックにてトライツ靭帯を超える部位まで挿入。GWを留置したまま、可能な限り吸引、減圧しながら内視鏡を抜去。イレウスチューブはワンステップイレウス(16Fr先端開口)(住友ベークライト社)の先端に近い部分に側孔を追加して、同部よりGWをチューブ外に逃がすロープウェー方式でイレウスチューブを挿入し、深部の空腸に留置した。これらの方法と既存のイレウスチューブの挿入方法で施行された8例(男:5例、女3例)、平均年齢70.3±10.2歳の施行総時間、透視時間、被爆線量を比較検討した。【結果】ラピッドシステムの施行総時間は13.4±4.5分、既存方法では29.2±12.0分と有意に時間は短縮され(P=0.0153)、各々の透視時間も7.2±2.1分、24.4±12.9分で有意に短縮され(P=0.0035)、被爆線量も35.0±40.2mGy、89.9±48.0mGyと有意に減少できた(P=0.0088)。また本法が関与したと考えられる有害事象は認めなかった。【考察】内視鏡下イレウスチューブ挿入はすべての点で既存の方法より有用であり、それを支持する報告も多数あり、今後は経鼻内視鏡を使用する治療内視鏡の中で標準化になるものと考えられる。その中でロングGW使用は煩雑であることから、本法のショートGWを使用したラピッドシステムのイレウスチューブ挿入は経鼻内視鏡下挿入時に、より簡便性を高めるもので標準化となりえるものと考えられた。