日本消化器内視鏡学会甲信越支部

8.APC治療後も再発を繰り返したGAVEに対しESDを行った一例

新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野
橋本哲、小林正明、佐藤明人、横山恒、竹内学、佐藤祐一、青柳豊
新潟大学医歯学総合病院光学医療診療部
成澤林太郎

gastric antral vascular ectasia (GAVE)に対し、アルゴンプラズマ凝固療法(APC)の有用性が認められているが、再発を繰り返す難治例も報告されている。今回APC後も再発を繰り返すGAVEに対し、ESDを施行し良好な経過が得られた症例を経験したので、若干の文献的考察を含めて報告する。

症例は50歳代の男性。家族歴、既往歴に特記事項なし。1991年4月より、IgA腎症による慢性腎不全に対し、前医にて透析導入。1997年1月、下血および高度貧血(Hb:4.9g/dl)を認めたため精査を行い、上部消化管内視鏡検査(EGD)で前庭部にびらん性胃炎と診断された。下血、貧血に対して輸血など対症療法を繰り返していたが改善なく、2002年7月精査加療目的で当科紹介受診した。

当科EGDでは胃前庭部に全周性に毛細血管拡張を認め、GAVEと診断した。また、前医内視鏡写真を見直すとGAVEの初期像と考えられた。GAVEが出血の原因と考え、APCを施行した。治療後は一時的に下血は消失し、貧血の改善を認めたが、その後GAVEの再発、下血に対し、APCを約3ヶ月〜1年に1回の頻度で繰り返し行い(計6回)、その度に輸血を要した。

2007年5月GAVE再発の加療目的に当科に入院。APCの効果が乏しいことから、胃亜全摘術を検討したが、患者の同意は得られなかった。次に内視鏡的粘膜切除により出血源の一部を切除する治療法を患者に十分説明し、同意が得られたため、GAVEに対しESDを施行した。全周性の毛細血管拡張所見は大弯前壁部の拡張が特に強いため、同部位を中心に約1/3周切除した。標本のサイズは60x45mmで、粘膜固有層主体に血管の増生・拡張を認めた。その後下血は消失し、切除1年後も内視鏡的にGAVEの増悪はなく、貧血の改善(Hb:12.0g/dl)を認めた。