日本消化器内視鏡学会甲信越支部

7.胃に限局したAL型アミロイドーシスの一例

独立行政法人 労働者健康福祉機構 新潟労災病院 内視鏡診療センター
麻植ホルム 正之、前川 智、森 健次、太幡 敬洋、合志 聡

アミロイドーシスは繊維性構造を呈する異常蛋白であるアミロイドが細胞外に沈着し諸臓器の機能不全を来たす原因不明の難治性代謝性疾患で限局性はまれである。アミロイドーシスはその沈着する線維蛋白の構造によりAA型、AL型、Aβ2M型に大別され、とくに消化管に親和性の高いアミロイド蛋白はAA型とAL型である。今回我々は胃に限局したアミロイドーシスの1例を経験したので報告する。

症例は80歳代、男性。貧血を検診で指摘され精査目的で施行した上部消化管内視鏡検査で胃前庭部大弯前壁に易出血性、粗大結節状の隆起性病変を認めた。早期胃癌を疑い同部位より生検を行ったが悪性所見はなく、粘膜固有層に間質を中心に弱好酸性の均質無構造物質が沈着していた。患者の同意を得て可能な限り全身検索を行った。限局性では脳、皮膚、呼吸器、尿路への沈着が一般的であり、消化管限局例は稀である。自験例では検索し得た範囲で胃以外にアミロイドを証明できなかったことや、全身性ではほぼ100%アミロイド沈着が存在する十二指腸で陰性であったこと、原発性に多く消化管親和性の高いAL型(γ鎖)であったことなどから限局性胃アミロイドーシスと診断した。

胃アミロイドーシスの形態学的特徴は軽度黄白色調の粘膜下腫瘤様隆起の多発、腫瘤形成や小結節などの不規則な隆起、びらんや潰瘍をともなうため胃癌や悪性リンパ腫と診断されることが多い。全身性アミロイドーシスの予後は一般的に不良とされているが、消化管に限局したAL型アミロイドーシスに関しては8年や10年の生存例が報告されており予後良好との報告が多い。しかし、他の報告では診断2ヶ月目に死亡した症例もあることから予後良好な疾患と断言できず注意深い経過観察が必要といえる。本症例は無治療で、貧血などの症状なく経過良好である。