日本消化器内視鏡学会甲信越支部

6.内視鏡切除を施行した孤発性胃Hamartomatous inverted polypの2例

長野市民病院 消化器科
立岩 伸之、長谷部 修、彦坂 吉興、須藤 桃子、武藤 英知、越知 泰英
同 病理
保坂 典子

症例1は50歳代男性。近医にて施行された上部消化管内視鏡検査で隆起性病変を指摘され,2007年6月8日に当科を紹介受診した。当科にて再検した上部消化管内視鏡検査では,胃体上部前壁に約20mmの頂部に陥凹を伴う粘膜下腫瘍を認めた。超音波内視鏡検査では第3層に主座を置くやや低エコーの腫瘤で,内部には多発無エコー域が混在していた。Hamartomatous inverted polyp(以下HIP)を疑い,9月12日にESDを施行した。病理組織学的には粘膜筋板に連なった平滑筋束が樹枝状に増殖し,粘膜下層には嚢胞状拡張を大小に示す腺管構造を認め,HIPと診断した。悪性所見は認めなかった。

症例2は70歳代男性。当院泌尿器科にて前立腺肥大症の術前精査のため腹部CTを撮影したところ胃内腔に隆起する有茎性腫瘤を認めたため,2007年10月12日に当科を紹介受診した。上部消化管内視鏡検査にて胃体中部大彎に約30mmの有茎性の粘膜下腫瘍を認めた。超音波内視鏡検査では第3層に主座を置く不均一なエコー輝度を示す腫瘤であり,内部には多発無エコー域が混在していた。HIPを疑い,12月11日にEMRを施行した。病理組織学的には腺窩上皮の嚢胞状拡張および粘膜筋板からの筋線維の不規則な伸びだしを認め,HIPと診断した。悪性所見は認めなかった。

孤発性胃HIPは比較的稀な疾患である。通常の内視鏡生検では胃粘膜上皮しか採取されないため,術前診断は困難とされている。今回我々は,超音波内視鏡検査にて特徴的な所見を示し術前に診断し得た症例を2例経験したので報告する。