日本消化器内視鏡学会甲信越支部

5.胃原発T細胞性悪性リンパ腫の1例

甲府共立病院消化器内科
西山敦士、高橋大二郎、加藤昌子、安田慎一郎、小西利幸
同 病理科
畑日出夫
巨摩共立病院内科
深沢眞吾
石和共立病院内科
高木績

症例は79歳男性。糖尿病、高血圧症で当院管理中も1年間中断。H19年4月頃より食欲不振、体重減少(4ヶ月で8kg)、微熱、倦怠感出現し、8月2日当院受診。るいそう著明、腹部膨隆あり、心窩部に腫瘤触知し同日上部消化管内視鏡検査実施、そのまま入院となった。血検査所見β2MG 4.51 mg/l、可溶性IL2レセプター 14800 U/mlと共に高値、HTLV-1抗体 16倍未満。内視鏡所見は噴門直下から胃体中部にかけて全周性を占める白苔を伴った巨大な潰瘍性病変あり。噴門部まで及んだ巨大病変であったがスコープ通過は容易で病変含め胃壁の伸展も良好で潰瘍辺縁は軟らかい印象で非上皮性腫瘍と考えられた。生検では、胃小窩は非腫瘍腺窩であり、粘膜固有層に核密度の増加とクロマチンの増量した異型性を有すリンパ球のびまん性浸潤増生が見られ、免疫染色でCD45RO陽性、CD20陰性であり、T細胞性悪性リンパ腫と診断された。全身検索でCT上腹膜腫瘤、胃周囲LN腫脹、左胸水大量貯留、左肺転移巣あり、Gaシンチ上左右側腹部に小集積散在あり、Ann Arbor病期分類StageWBと診断。Best supportive careとなり、9月2日永眠、病理解剖となった。免疫染色を追加してCAM5.2陰性、LCA陽性、CD3陽性、CD30陰性。骨髄所見に異常なし。末梢リンパ節腫脹なし。以上より節外性であり、胃原発悪性リンパ腫で末梢性細胞リンパ腫(非特定)と診断された。胃原発悪性リンパ腫はB細胞性がほとんどであり、T細胞性は数%と報告されている。また、T-細胞性はB細胞性に比べ予後も非常に悪く(間中らによると2年生存率0%という報告あり)、この症例も1年前の内視鏡検査では所見なく急速に進行したものと考えられた。今回このように貴重な症例を経験したので報告する。