日本消化器内視鏡学会甲信越支部

3.粘膜下腫瘍様形態を呈し幽門狭窄で発症した胃癌の1例

山梨県立中央病院消化器内科
吉田貴史、小嶋裕一郎、三澤綾子、小林美有貴、辰巳明久、細田健司、鈴木洋司、廣瀬雄一、望月仁
同外科
白石謙介、須貝英光、三井照夫
同病理
望月邦夫 小山敏雄

症例; 45歳、男性。主訴; 腹部膨満感、嘔吐。2007年10月初旬腹部膨満感あり、下旬には嘔吐も出現したため当院受診。上部消化管内視鏡検査では幽門前庭部後壁に周囲粘膜と同様な粘膜で被われた隆起を認め、幽門狭窄を呈していた。内視鏡の通過は不可であった。その後、11月下旬精査および外科手術目的で入院となった。腹部CT検査では幽門部に壁肥厚、同部の狭窄による胃内の液体貯留を認める以外異常所見は認められなかった。超音波内視鏡検査では、第II層からIV層に連続する低エコー像を認め 近位側からの観察では第IV層の肥厚が認められた。上部消化管造影検査では、前庭部に大きさ約3 cmの隆起を認め頂部に陥凹を有していた。入院後実施した上部消化管内視鏡時の同部の生検で、印環細胞癌を認めた。その後、当院外科で幽門側胃切除術を実施した。切除標本病理所見では、腫瘍はpor2で6x2.5 cmで十二指腸まで浸潤し、LD, T3, N2, H0, P0,CY0, stageIIIBであった。

以上、粘膜下腫瘍の形態を呈し幽門狭窄により症状が出現した胃癌の1例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。