日本消化器内視鏡学会甲信越支部

69.IPMNに対するスライディングチューブと細径内視鏡を用いた膵管鏡の経験

新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野
伊藤 裕美、塩路和彦、富樫忠之、林 和直、橋本 哲、横山 恒、高村昌昭、佐藤祐一、青柳 豊
新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器・一般外科学分野
皆川昌広、黒崎 功
新潟大学大学院医歯学総合研究科 分子・診断病理学分野
佐藤大輔、渡邊 玄、味岡洋一
新潟大学医歯学総合病院 光学医療診療部
成澤林太郎

 症例は70歳代男性。約30年前に胃潰瘍で幽門側胃切除術、Billroth-II法再建をされている。2007年 1月ドックで主膵管の拡張を指摘。腹部CTが施行され、主膵管の拡張と、膵頭部に40mm大、膵尾部 20mm大のそれぞれ内部に充実性部分を伴う多房性嚢胞性病変を指摘された。IPMNが疑われ精査目 的に4月当科入院となった。 ERCPはBillroth-II法再建後のため直視鏡(Q240)を用いて行った。主 乳頭は開口部が開大し粘液が排出されていた。ERPでは主膵管は最大17mmに拡張し、膵頭部主膵管 内には乳頭状腫瘍と思われる透亮像も認めた。膵頭部の嚢胞は主膵管との交通を認めたが、膵尾部の 嚢胞とは交通を確認できなかった。EUSにて膵尾部の嚢胞と主膵管との交通を確認でき、内部には高 さ13mm大の乳頭状隆起を認めた。これらの所見より頭部・尾部の両病変とも手術適応と判断した。 膵体部膵管にも拡張を認めたため膵全摘術が必要と考えたが、拡張した膵体部膵管にはERP・EUS上 明らかな結節はなく、病変の進展範囲を決定するために膵管鏡を行った。 Billroth-II法再建のため、 通常の親子膵管鏡の施行は困難と考え、細径内視鏡(N260)とシングルバルーン小腸内視鏡で使用す るディスポーザブル スライディングチューブ(ST-SB1)を用いて行うこととした。スライディング チューブの先端から80 cmの所に側孔を空け、そこから直視鏡(XQ240)を挿入。スコープが主乳頭に 到達したところで先端のバルーンを拡張・固定した。次にガイドワイヤーを膵尾部まですすめ留置し たところでスコープを抜去。ガイドワイヤーをN260の鉗子孔に通し、ガイドワイヤーに沿わせるよ うにして膵管に挿入した。乳頭部の通過がやや困難であったが、尾側膵管まで観察可能であった。膵 頭部主膵管には乳頭状腫瘍を認めたが、それより尾側の主膵管には病変を認めなった。 7月3日に手 術施行。術中迅速病理診断でも膵体部膵管には腫瘍を認めず、膵頭十二指腸切除+膵尾部切除が施行 され、膵体部を温存することができた。 スライディングチューブと細径内視鏡を用いた膵管鏡は、 症例は限られるものの簡便で有用な方法と考え報告する。