日本消化器内視鏡学会甲信越支部

68.成因不明で主膵管との交通を有した巨大膵仮性嚢胞の1例

山梨県立中央病院 消化器内科
後藤順子、辰巳明久、廣瀬雄一、小林美有貴、細田健司、三澤綾子、鈴木洋司、小嶋裕一郎、望月 仁
山梨県立中央病院 外科
滝口光一、赤澤祥弘、三井照夫
山梨県立中央病院 病理
望月邦夫、小山敏雄

 症例は50歳、男性。主訴は心窩部から左側胸部痛。飲酒歴は日本酒1日約2合。現病歴は2007年4月 3日午後4時頃から心窩部に冷汗を伴う疼痛が出現したため近医を受診し、救急車にて当院を受診。心 電図、心エコー検査にて心疾患は否定的で症状も軽快し帰宅。同年4月近医の腹部超音波検査で左側 腹部に嚢胞性病変を指摘され、当院を紹介受診し精査加療目的にて当科入院となった。入院時身体所 見では腹部は軟で左側腹部に圧痛を伴う弾性硬の膨隆を認めた。入院時血液検査所見では肝機能はほ ぼ正常で、Amy 99IU/l、LIP 60.8IU/lと正常値であったが、CRP 10.25mg/dlと炎症所見を認め た。入院後の腹部超音波検査、CT検査、MRI検査から膵尾部の長径約14cmの膵仮性嚢胞が疑われた が、急性・慢性膵炎や外傷の既往歴が無く、その成因が不明であった。また、嚢胞壁に一部不整な部 位も有り壁在結節の存在も否定出来なかった。腹部超音波ガイド下嚢胞穿刺ドレナージ施行し、黒褐 色の嚢胞液を採取し、培養陰性で細胞診はclass IIIaであった。ドレナージチューブからの嚢胞造影で は、主膵管との交通が認められたが膵管に異常所見は認められなかった。その後嚢胞はほぼ消失した が、腫瘍性病変の存在も否定出来なかったため、当院外科にて5月に膵尾部切除施行。病理組織検査 では腫瘍性病変は存在せず、膵仮性嚢胞に矛盾しない所見であった。以上、成因不明で主膵管との交 通を有した巨大膵仮性嚢胞の症例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。