日本消化器内視鏡学会甲信越支部

66.手術不能有症状胆嚢結石に対して経乳頭的胆嚢ステント留置術を施行した1例

飯山赤十字病院 内科
丸山雅史、岩谷勇吾、村木 崇、横澤秀一
飯山赤十字病院 外科
渡邉隆之、柴田 均、中村 学、石坂克彦、川村信之

【症例】87歳、女性 【主訴】右上腹部痛 【既往歴】2001年 脳梗塞(塩酸チクロピジン内服)、低酸 素血症(胸郭・脊椎高度変形に伴う換気障害) 【現病歴】2000年頃より食後に胆石発作を繰り返すよ うになる。手術希望無く経過観察中、2007年4月食後右上腹部痛を認め受診。右上腹部に圧痛があり、 CTにて胆石と胆嚢の腫大を認めた。炎症反応は上昇していなかったが症状の改善が無く入院となった。 絶飲食と抗生剤投与行うも第4病日 白血球 12170 /μl、CRP 26 mg/dlと高度の炎症所見に加え、血 小板 6.1 万/.μl、FDP-DD 21.4 μg/mlと汎血管内凝固症候群(以下DIC)を併発した。塩酸チクロピジ ン内服中止後間もないこととDICを併発していたことから、出血の危険性を考慮し、経皮的に行わず 経乳頭的経鼻胆嚢ドレナージ術を選択した。胆管造影により胆嚢管の結石は嵌頓が解除され、胆嚢内 に経鼻胆道ドレナージチューブ(Cook社製 6Fr pig tail)を留置し得た。以後、速やかに症状と炎症所 見・DICの改善を認めた。以前より高度の低酸素血症を認め、手術を希望されなかった為、十分なイ ンフォームド・コンセントの上、胆石の嵌頓予防に経乳頭的胆嚢ステント留置術を施行した。排液胆 汁の混濁が消失した第9病日に経鼻胆道ドレナージチューブをガイドに内視鏡を挿入し、ガイドワイ ヤーを胆嚢内に留置。胆汁流出路を確保する目的にESTを付加し、胆嚢ステント(Cook社製 7Fr 7cm double pig tail)を留置した。以後、胆石発作は同年9月現在認めていない。手術不能有症状胆嚢結石 に対して経乳頭的胆嚢ステント留置術の報告は少なく、今後も十分な経過観察が必要であるが、良好 な経過を得た1例を経験したので報告する。