日本消化器内視鏡学会甲信越支部

63.胆嚢炎、肝膿瘍、敗血症で発症し、広範囲胆管進展を伴った胆嚢管癌と考えられ た1例

山梨県立中央病院 消化器内科
小林美有貴、三澤綾子、小嶋裕一郎、廣瀬雄一、辰巳明久、細田健司、鈴木洋司、望月 仁
山梨県立中央病院 外科
古屋信二、三井照夫
山梨県立中央病院 病理
望月邦夫、小山敏雄

 症例は68歳男性。発熱、悪寒、戦慄を主訴に入院した。検査所見では、白血球、炎症反応高値、胆道 系酵素の軽度上昇、CA19-9 高値を認めた。腹部造影CTでは、胆嚢の軽度腫大、壁肥厚、肝S5胆嚢 床付近の低濃度域を認め、胆嚢炎、肝膿瘍と診断した。入院後、敗血症性ショック、急性腎不全を合 併したため、経皮経肝胆嚢ドレナージを施行した。胆汁・血液培養では大腸菌が検出された。MRCP では胆嚢・胆管結石、胆管狭窄は認めず、ドレナージチューブからの造影では、胆嚢管壁に不整な狭 窄を認め、総胆管に狭窄は無かった。胆嚢ドレナージ後の5mmスライス造影CTでは、胆嚢管に壁肥 厚、enhancementがあり、胆嚢、肝外胆管にもびまん性壁肥厚を認めた。以上の所見より胆嚢管癌 を疑い、開腹手術を施行した。術中所見では腫瘍は胆嚢管から3管合流部を中心に肝十二指腸間膜内 の胆管周囲に腫瘤を形成しており、胆管浸潤を伴う胆嚢管癌と診断し、D2郭清を伴う胆嚢摘出術、胆 嚢床切除術、胆管切除術を施行した。切除標本病理所見では胆嚢管を中心として、粘膜のなだらかな 隆起を認め、総肝管から総胆管・胆嚢管・胆嚢頚部にかけて高分化型腺癌が壁全層性に浸潤性増殖を 示し、 2群リンパ節転移を伴い、 stageIVb、根治度Cであった。胆嚢管、総肝管にss浸潤を認めてお り、上中部胆管原発の胆管癌の可能性も否定できないが、術中所見で胆管の胆嚢管付着側の変化が強 いことから、胆嚢管原発と考えた。現在外来にてGemcitabin投与中である。胆嚢炎、肝膿瘍、敗血 症で発症し、術前範囲診断が困難であった、胆嚢管癌と考えられた1例を経験したので、若干の文献 的考察を加えて報告する。