日本消化器内視鏡学会甲信越支部

62.胆管癌、胆嚢癌、胆嚢穿孔を合併した陶器様胆嚢の1例

新潟県立新発田病院 内科
野澤優次郎、五十嵐 聡、杉山幹也、夏井正明、姉崎一弥、本間 照

 症例は71歳、女性。37歳時に胆嚢結石を指摘されたが、放置していた。平成18年10月から腹部膨満 感、腹痛が出現した。平成19年4月CTで総肝管から左右肝管分岐部の壁肥厚、陶器様胆嚢および胆嚢 結石、更に胆嚢との連続性が疑われる大きさ14cmの嚢胞性病変を右上腹部に認めたため、精査加療 目的に当科入院となった。入院時現症では、右上腹部に弾性硬の腫瘤を触知し、検査成績ではγ-GTP とCA19‐9 が軽度上昇していた。ERCPで総肝管から左右肝管分岐部に全周性狭窄、US、EUS、 IDUSで大きさ約2cmの軽度高エコー腫瘤とそれに連続する壁肥厚が描出された。PTCS目的にPTCD、 瘻孔拡張を行った。その2週間後、突然、腹痛が増強し、嚢胞破裂による汎発性腹膜炎が疑われ、緊 急手術となった。嚢胞性病変と思われたものは腫大した胆嚢底部であり、穿孔部位よりドレナージ チューブを留置した。腹水細胞診はclassIIであった。PTCSでは、総肝管から左右肝管分岐部にかけ て発赤した隆起性病変を伴う全周性狭窄を認めた。生検所見では炎症性変化で明らかな悪性所見を認 めなかった。しかし、内視鏡的には胆管癌が否定できなかったため、肝外胆管切除術、胆嚢摘出術、 胆嚢床切除術およびリンパ節郭清を施行した。摘出標本の検討により胆管癌と胆嚢癌の合併を伴う陶 器様胆嚢と診断された。陶器様胆嚢への胆嚢癌の合併は知られているが、胆管癌および胆嚢穿孔の合 併は稀と考えられ、文献的考察を加え報告する。