日本消化器内視鏡学会甲信越支部

61.腹部US検査を契機に発見された無症候性胆管癌の2例

飯田市立病院 消化器科
岡庭信司、中村喜行、海野 洋
飯田市立病院 外科
平栗 学、堀米直人、金子源吾
飯田市立病院 臨床病理科
持塚章芳、伊藤信夫

 胆管癌は、腹痛・掻痒感・黄疸といった自覚症状や肝機能障害などを契機にして発見されることが多 い。今回、発見時には生化学検査に全く異常が無く、ほぼ無症状であった胆管癌を2例経験したので 報告する。 症例1.前立腺肥大の経過観察目的にUSを施行し、胆管拡張を認め、再検時のUSにて1cm弱の低エ コー腫瘤像を指摘された。EUSにて、上部胆管内に1cm弱の結節状の腫瘤像を認め、外側高エコー層 の一部に途絶を確認したために深達度ss以深の結節浸潤型胆管癌と診断。経口胆道鏡にて腫瘍は胆嚢 管合流部に主座を持ち、十二指腸側にわずかな進展を認めた。病理組織学的には大きさ15mm(結節 部9×7×5mm)、深達度ssの管状腺癌であり、ly1、v0、pn1のstagellであった。
 症例2.膀胱癌術後の経過観察目的にUSを施行し、限局性の胆管壁肥厚を指摘された。EUSおよび 腹部CTでは明らかな腫瘍性病変を指摘できなかった。ERCにて中部胆管のわずかな硬化像を、IDUS では中部胆管の限局性壁肥厚と胆泥を認めた。胆管癌を考慮し胆汁細胞診を施行したところ、癌細胞 陽性であった。経口胆道鏡にて、胆嚢管合流部近傍の胆管壁肥厚および十二指腸側の粘膜不整像を認 めた。病理組織学的には大きさ30mm(隆起部5mm)、深達度fmの表面隆起型早期胆管癌であり、 ly0、v0、pn0、stagelであった。
 いずれも腹部USが発見契機となっており、経口胆道鏡が進展度診断に有用であった。