日本消化器内視鏡学会甲信越支部

59.ヨード造影剤アレルギー既往を持つ肝細胞癌患者に対してガドリニウム造影剤 を用いて肝血管造影を施行した1例

富士吉田市立病院 内科
金 民日、平山雄一、高橋正一郎

【背景】造影剤アレルギー既往のある症例に対して画像診断やIVR治療が必要になった場合、臨床上 様々な制限が加わりその診療方針の決定が困難なケースが散見される。今回、我々は造影剤アレル ギーの既往のある肝細胞癌(以下HCC)患者に対しMRI用の造影剤であるガドリニウムを用い安全に肝 血管造影を行ない経カテーテル動注療法(以下TAI)を行うことができた1例を経験したので報告する。 症例は75歳男性。平成9年よりアルコール性の肝硬変のため当院外来にて経過観察されていた。平成 11年7月、肝S5に直径約10mmのHCCを発症し経皮的エタノール注入療法(以下PEIT)を施行した。 平成12年6月に肝S4、S8に再発がみられたため経カテーテル肝動脈塞栓療法 (以下TAE)を施行され た後は再発なく経過観察されていた。平成15年2月造影CT施行したところ造影剤の副作用と思われる 血圧低下、呼吸困難、意識障害を認め入院加療を行った。その後はMRI及び超音波にて経過観察され ていた。平成18年5月に肝S4、S7、S8に再発が見られたためPEIT目的にて入院した。しかし、腫瘍 描出が超音波にて不明瞭で治療を完遂することができなかったため腫瘍の描出が改善してから再治療 を行う方針となった。腫瘍径の増大に伴い描出の改善がみられたためPEITを施行したが、エタノール が腫瘍内へ留まらず効果的な治療を行うことができなかった。病変が超音波で不明瞭なため局所治療 が困難なことやヨード造影剤に対するアレルギーの既往からMRI用の造影剤であるガドリニウムを用 いてTAEを行う方針となった。腹腔動脈のDSAの後、腫瘍の栄養血管を判別することは可能であった。 しかし、動脈硬化および血管の走行の影響からマイクロカテーテルを栄養血管に選択的に挿入するこ とができずTAIを行い治療を終了した。ガドリニウム造影剤の総投与量は36mlであり、画像はヨード 造影剤に比較すれば劣るものの検査には耐えうる画質であった。【結語】造影剤アレルギーを有する 症例に対し、ガドリニウムを用いて安全に血管造影およびリピオドール-TAI治療を施行することがで きた1例を経験したので報告する。