日本消化器内視鏡学会甲信越支部

58.肝生検で確定診断し得たサルコイドーシスの1例

新潟県立新発田病院 内科
五十嵐 聡、野澤優次郎、杉山幹也、夏井正明、姉崎一弥、本間 照

症例:53歳、女性。既往歴:32歳時卵巣腫瘍、48歳時脳出血、52歳時腰部脊柱管狭窄症。喫煙歴: 20本/日×35年、飲酒歴:日本酒2〜3合/日×30年。現病歴:2007年3月、3度房室ブロックに伴 う徐脈性心不全で当院循内に入院し、DDD恒久的ペースメーカー植込み術を施行した。Gaシンチ, CT,血液検査等でサルコイドーシスを疑われ精査のため当科に入院した。身体所見:心肺異常なし。 表在リンパ節触知せず。皮膚所見なし。血液検査所見:ALP 388IU/l,γ-GTP 56IU/l,BUN 28.1mg/dl,Cr 1.37mg/dl,Ccr 44.0ml/minと軽度の胆道系酵素上昇・腎機能障害、γ-グロブリ ン26.3%,血清ACE 29.7IU/l,リゾチーム 15.9μg/ml,sIL-2R 1560U/mlと高値を示し、ツ反 は陰性で、HBs抗原,HCV抗体共に陰性であった。画像所見:GIF・CF;特記所見なし。Gaシン チ;心筋,肝に集積あり、腹部US;肝両葉にわたり低輝度腫瘤が多発していた。腹部CT;肝内に血 管の走行に沿った帯状の低濃度腫瘤が多発し、腹部大動脈〜両側腸骨動脈周囲に軟部影を認めた。 Sonazoid US;血管周囲に境界明瞭な低輝度腫瘤があり、Delayed phaseでは不明瞭化した。血清 ACE・リゾチームの上昇、ツ反陰性、Gaシンチ集積像陽性よりサルコイドーシスの診断基準で臨床 診断群(ほぼ確実)であった。S5肝表の腫瘤に対しエコー下針生検を施行した。病理:門脈域の炎症 細胞浸潤、一部に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認め、診断基準上、組織診断群(確実)と診断し得た。 治療として、PSL 30mg/日の内服を開始した。内服1ヶ月後のCTでは肝内低濃度腫瘤・大動脈周囲 軟部影の縮小傾向を認めた。PSLは4週間毎に5mgずつ減量中である。肝機能正常なサルコイドーシ ス症例でも、約50〜80%に肝病変が認められるとされ、サルコイドーシスの診断において肝生検が 有用であり、また、ステロイドによる治療が肝病変にも有効であると考えられた。