日本消化器内視鏡学会甲信越支部

52.生体腎移植後HBV associated Fibrosing Cholestating Hepatitis (FCH) を発症した1例

新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野
津端 俊介、五十川正人、湯田知江、高村麻子、田村 康、五十嵐正人、竹内 学、大越章吾、野本 実、青柳 豊

 FCHは、免疫抑制下でのHBV感染などで発症し致死的な経過を辿る病態である。今回、抗ウイルス 薬の早期投与でも病態を改善できず、急激な経緯を辿ったFCHの1例を経験した。症例は67歳男性。 56歳時より慢性腎不全と診断されていた。06年5月、単身中国で死体腎移植術をうけた。6月、術後 フォローを希望して当院泌尿器科外来初診。初診時血液検査上肝機能異常は認めず、HBs抗原 (+)、 HCV抗体 (-)であった。タクロリムスとステロイドが開始、以降同科フォローとなった。その後も肝 機能障害は認めていなかったが、07年3月上旬、全身倦怠感出現し3月27日、同科外来受診。GOT 292IU/l、GPT 598IU/l、γGTP 290IU/lなどと肝酵素上昇を認め当科外来紹介受診。精査目的に 3月29日入院となった。入院後の精査では、HBs抗原/HBs抗体 (+)/(-)、HBe抗原/HBe抗体 (-)/(+)、 HBc抗体 (+)、IgM-HBc抗体 (-)、HBV-DNA 7.7log copy/ml、HCV抗体 (-)であった。一方タクロ リムス血中濃度も外来時の3-4倍に上昇していた。HBVの再活性化による急性肝炎と診断、入院初日 よりエンテカビル1mgを開始。肝酵素は第16病日まで漸減(GOT 128IU/l、GPT 256IU/l)した が、その後横這いとなった。一方肝予備能は増悪の一途を辿った(入院初日T-Bil 1.4mg/dl、PT 93%、第12病日T-Bil 3.1mg/dl、PT 58%、第21病日T-Bil 21.1mg/dl、PT 57%)。第12病日に 再検したウイルス量も7.7log copy/mlと依然高値だった。第21病日、突然背部痛を自覚。腹部CTに て重症急性膵炎と診断。CHDFなどの集中治療を行うも、第23病日永眠された。ネクロプシー上、門 脈域の線維性拡大、肝細胞内の胆汁鬱滞、胆管の増生、肝細胞の膨化変性を認めた。細胞浸潤は門脈 域に軽度認めるのみであった。以上より、FCHと診断した。