日本消化器内視鏡学会甲信越支部

49.人間ドックにて発見された十二指腸水平脚陥凹型腺腫の1例

長野市民病院 消化器科
立岩伸之、長谷部修、彦坂吉興、須藤桃子、武藤英知、越知泰英
長野市民病院 外科
草間 啓、関 仁誌
長野市民病院 病理
保坂典子

 症例は61歳,男性。自覚症状なし。2007年5月25日に施行した人間ドックの上部消化管内視鏡検査 にて十二指腸水平脚に約10mmの0-IIc様陥凹性病変を認めた。直視鏡による観察が困難であったた め後方斜視鏡に変更し観察を行った。陥凹面は発赤調で局面,領域性を持っており,陥凹辺縁は星芒 状不整を呈していることから0-IIc型十二指腸癌が疑われたが,生検では腺腫との診断であった。6月 22日に細経プローブによる超音波内視鏡を施行した。 スコープの操作性が不良であり観察が困難で あったが,一部に粘膜下層浸潤が疑われる所見を認めた。病変が十二指腸水平脚の膵臓側に位置する ことより内視鏡的切除は困難であり,また粘膜下層浸潤癌を否定できないため,7月2日に十二指腸部 分切除術+リンパ節郭清(No.14d)を施行した。切除標本の病理組織学的診断はtubular adenoma, moderate dysplasiaであった。陥凹型十二指腸腺腫は稀な疾患であり,1985年から2007年までの 医学中央雑誌による検索では報告例は9例のみであった。また,少数ではあるが陥凹型十二指腸腺腫 内癌の報告も4例あり,上部消化管内視鏡検査を施行する際には本疾患も念頭に置き,注意深い観察 が必要と考えられた。