日本消化器内視鏡学会甲信越支部

47.バルーン下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)が奏功した十二指腸静脈瘤の1例

新潟県立中央病院 内科
堂森浩二、本田 穣、丸山正樹、平野正明、藤原敬人

【はじめに】肝硬変に合併した十二指腸静脈瘤に対し、バルーン下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO) が有効であった1例を報告する。【症例】78歳、女性、C型肝硬変、十二指腸静脈瘤と食道静脈瘤 (いずれもF1程度)にて近医経過観察中、右側腹部痛を主訴に、2007年6月7日、当院救急外来を受 診した。血圧150/70mmHgと血圧は保たれ、他のバイタルにも異常を認めなかったが、血液検査で、 Hb:6.9g/dlと著明な貧血を認めた。上部消化管内視鏡および腹部造影CTで十二指腸下行脚に静脈 瘤の著明な増大を認めた。上部消化管内視鏡実施時には、活動性の出血は認めなかったが、red color sign陽性でF3程度の形態を呈しており、同部より出血を繰り返していたものと考えられた。腹 部造影CTより流出路は下大静脈から分岐する右卵巣静脈と推定されたため、第7病日にBRTOを施行 し治療に成功した。後日、貧血の改善、上部消化管内視鏡および造影CTでの十二指腸静脈瘤の血栓 化・F1程度への消失を認めている。BRTOに伴う合併症はなく、現在経過は良好である。【考察】十 二指腸静脈瘤はまれであるが、時に致死的な出血を来たすことがある。近年種々の治療法が開発され ているが、活動性出血のない十二指腸静脈瘤に対してBRTOが有効であるとの報告も多い。IVRが奏 功した十二指腸静脈瘤の症例を文献的考察も含めて報告する。