日本消化器内視鏡学会甲信越支部

46.EUSおよびボーリングバイオプシーが有用であった十二指腸球部異所性膵の1例

長野市民病院 消化器科
須藤桃子、長谷部修、彦坂吉興、武藤英知、立岩伸之、越知泰英、沖田浩一
長野市民病院 外科
宗像康博
長野市民病院 病理
保坂 典子

 症例は78歳、男性。無症状。平成14年9月に他院にて施行された上部消化管内視鏡検査で、十二指腸 球部に粘膜下腫瘍を指摘された。腹部CT検査では同部に約5mmの腫瘤を認めたが、以後腫瘤に増大 傾向はなく、1年毎の経過観察の方針とされた。平成17年7月当院受診。再検した内視鏡検査では、 十二指腸球部SDA対側に約5mmの弾力性を有する粘膜下腫瘍を認めた。腫瘍表面には白色瘢痕を認 めたが、大きさはほぼ不変であった。しかし平成18年1月には同病変は約10mmと増大傾向を認め、 クッションサイン陰性で硬い印象であったため、超音波内視鏡検査(EUS)を施行。EUSでは第3層 を主体に第4層に連続する18mm×10mmの、無エコー域が散在する低エコー腫瘤を認めた。同病変 に対しボーリングバイオプシーを施行したところ、十二指腸粘膜下に膵腺房組織を認め、異所性膵と 診断した。十二指腸粘膜下腫瘍のうちEUSで導管構造や無エコー域を有する病変は頻度的にブルンネ ル腺腫が多いが、本例は内視鏡所見で表面の変化が乏しく、やや硬いのが異なる点であった。十二指 腸異所性膵は消化管出血で発見されることが多く、無症状で診断されることは稀なため報告する。