日本消化器内視鏡学会甲信越支部

45.ひょうたん摂食による急性出血性胃十二指腸炎の1例

佐久総合病院 胃腸科
吉田 晃、堀田欣一、小山恒男、宮田佳典、友利彰寿、高橋亜紀子、北村陽子、古立真一、松村孝之、岡本耕一、田沼徳真、米田頼晃、大瀬良省三

【はじめに】ひょうたんを摂食することで嘔吐、下痢、腹痛などの症状を呈する中毒を起こすことが 知られている。しかし、ひょうたん中毒の内視鏡所見についての報告はない。今回、我々はひょうた ん摂食にて急性出血性胃十二指腸炎を来した症例を経験したので報告する。
【症例】70歳代、男性。
主訴:吐下血。
現病歴:2007年8月、自宅で栽培したひょうたんを塩漬けにしたものを2〜3切れ摂食した。摂食直 後から苦みのために嘔吐し、嘔吐を繰り返すうちに吐物が血性となり当院救急外来を受診した。救急 外来受診時に水様の下血が見られ、上部消化管内視鏡を施行した。
内視鏡所見:食道胃接合部に裂創はなかった。幽門前庭部を中心に出血を伴う著明な浮腫、発赤を認 めたが、びらんや白苔の付着はなかった。十二指腸球部および下行脚にも発赤が多発しており、急性出血性胃十二指腸炎と診断した。
経過:入院後絶食および補液のみで嘔吐、下痢、下血とも翌日に改善した。第4病日に施行した上部 消化管内視鏡では胃十二指腸炎は改善し、この際に行った幽門前庭部および十二指腸からの生検では 軽度の浮腫、単核球浸潤と小出血巣を認めるのみであった。第5病日に施行した大腸内視鏡では、回 腸末端も含めて異常を認めず、便培養では常在菌の検出のみであった。経口摂取を開始したが症状の 再燃なく、第7病日に退院となった。なお、入院時採血で白血球の増多、軽度の腎機能障害が見られ たが、いずれも改善している。
【考察】ひょうたん食中毒はひょうたんに含まれるククルビタシンBが原因となり、下痢、嘔吐を主 訴とすることが多い。予後は良好であり、対処療法で軽快するとされている。他に報告例がないため、 典型的なひょうたん中毒の内視鏡所見は不明であるが、本症例では急性出血性胃十二指腸炎を呈した。