日本消化器内視鏡学会甲信越支部

43.完全型直腸脱に対するDelorme手術の3経験例

山梨赤十字病院 外科
大中 徹、中尾健太郎、後藤哲宏、大塚耕司
昭和大学 一般・消化器外科
角田明良、草野満夫

 症例1:83歳女性、5年前に排便後肛門部膨隆を自覚。初診時怒責にて70mmの直腸脱出を認め手術 適応となった。(手術はL3/4よりジブカイン・テーカイン(ネオペルカミンS)2.1mlにて脊椎麻酔、 砕石位とし、粘膜下に止血目的に20万倍ボスミン加生食を局注し開始した。)手術時間は94分、出 血量95ccであった。術後局所からの出血無く、3PODに軟便排泄あり。その後も排便障害無く第11 病日軽快退院となった。症例2:93歳女性、3年前より怒責時直腸脱を自覚、自己還納していたが、 脱出腸管が増大してきたため来院。初診時怒責にて100mmの直腸脱出を認め手術適応となった。 (手術はL2/3より等比重マーカイン1.8mlにて脊椎麻酔、砕石位とし、20万倍ボスミン加生食6ccを 局注し開始した。)手術時間は110分、出血量50ccであった。術後排便障害無く、3POD軟便排泄 あり。肛門周囲の皮膚のただれを認めたが、第13病日軽快退院となった。症例3:85歳女性、初診2 週間前に脱肛あり、その後易脱出性となった。初診時怒責にて80mmの直腸脱出を認め手術適応と なった。(手術はL2/3よりボスミン0.1cc加ネオペルカミンS5ccにて脊椎麻酔、砕石位とし、粘膜 下に20万倍ボスミン加生食6.4ccを局注し開始した。)手術時間は124分、出血量少量であった。術 後2PODに下痢便排泄を認めたが、その他の合併症なく第17病日軽快退院となった。 3症例の平均 年齢は87.0才、平均手術時間は109.3分、平均出血量48.3cc、3例とも術後の排便障害なく第一便排 泄の平均は2.7病日。術後の平均入院期間は13.7日であった。今後症例を重ね手術時間の短縮や、出 血量の減少等改善点はあるが、全例排便障害無く術後のQOLも良好である事より、Delorme手術は 高齢者直腸脱に対し有効な手術法であると考えられる。