日本消化器内視鏡学会甲信越支部

39.半年間の経過を追えた静脈硬化性大腸炎の1例

長野中央病院 消化器内科
小島英吾、太島丈洋、田代興一
長野中央病院 病理科
束原 進

 今回われわれは,半年間の経過観察を追えた静脈硬化性大腸炎の一例を経験したため報告する.症例 は59歳女性.平成18年11月某日に右側腹部の違和感を主訴に近医受診された.発熱は認めなかった が,CRPは5.6mg/dlと上昇していたため抗生剤にて加療された.しかしその後も症状が遷延し,11 月15日に当院紹介され入院となった.下部内視鏡検査を施行したところ,横行結腸から徐々に粘膜の 色調が青銅色調となり,盲腸まで連続していた.上行結腸では粘膜の一部にびらん,発赤所見も認め た.注腸検査では直腸から横行結腸までは特筆すべき所見は認めなかったが,上行結腸では全周性の 比較的柔らかな狭窄を呈していた.腹部CTでは,上行結腸近傍の腸間膜にわずかな石灰化巣が描出さ れた.病変部からの生検で,粘膜固有層および血管周囲に好酸性の膠原線維の密な沈着を認め,静脈 硬化性大腸炎と診断した.ビフィズス菌製剤にて保存的に加療を行ったところ,症状は軽快されたた め外来にて約半年間経過観察を行ったが,症状の増悪は見られなかった.半年後の内視鏡所見でも初 回時とほぼ同様の所見を認めた.本症の原因としては慢性的な腸間膜循環障害と推察されているが, 本例では明らかな原因は不明であった.現在自覚症状を認めていないことより特別の治療は行ってい ない.しかし,今後病変の進展や,症状の出現などの可能性も否定できないため,定期的な経過観察 が必要であると思われた.