日本消化器内視鏡学会甲信越支部

36.Collagenous colitisの臨床症状と内視鏡所見について

丸の内病院 消化器内科
山本香織、中村 直
上田生協診療所
瀬角英樹
信州大学医学部 生体情報検査学
太田浩良

 当院では1例目となるcollagenous colitisの症例を経験した。演者が3年前の第57回本地方会で報告 した2例と臨床症状、内視鏡所見を比較検討し報告する。【症例1】63歳、女性。下腹部不快感にて 下部消化管内視鏡検査施行。上行結腸に小びらんと全大腸に顆粒状浮腫状粘膜、血管透見の不良像を 認めた。改めて病歴を聴取すると、2年前より1日数回の軟便が続き時々水様性下痢もみられていたと いうこと、症状出現の約4ヶ月前よりランソプラゾールの内服が追加となっていたことがわかった。 生検にて上皮直下に約40μmと肥厚したコラーゲンバンドを認めcollagenous colitisと診断した。 内服をラベプラゾールに変更したところ自覚症状改善した。【症例2】68歳、男性。ランソプラゾー ル内服開始となった3か月後より1日10行以上の水様性下痢が2ヶ月間持続。下部消化管内視鏡検査で は、発赤浮腫状粘膜を全大腸に散在性に認めcollagenous colitisを疑って生検施行、診断した。塩酸 ロペラミド投与にて自覚症状、内視鏡所見、病理所見とも改善がみられた。【症例3】39歳、女性。 健診便潜血反応陽性。内視鏡所見は血管透見の不良な粘膜が散在する他には異常なく、生検にて collagenous colitisと診断した。【考察】collagenous colitisは出血を伴わない慢性水様性下痢を 主症状とし、micriscopic colitisの1組織型とされている。報告の多い欧米では内視鏡所見は正常と されているが、本邦では軽度の粘膜浮腫、発赤を認めるとの報告が多い。今回の症例1では自覚症状 は弱かったが、粘膜の変化は最も顕著であった。症例1、2ではランソプラゾール内服開始後の症状出 現であった。症例3は、内視鏡所見は2と酷似しているが無症状であった。コラーゲンバンドの肥厚の みで疾患概念と当てはまらない症例をどのように扱うべきか課題が残る。