日本消化器内視鏡学会甲信越支部

35.子宮頸癌術後に異時性脾、大腸転移を来した1例

国立病院機構松本病院 外科
中村俊幸、小池祥一郎、中川 幹、赤羽康彦
国立病院機構松本病院 内科
羽場 信、松林 潔、宮林秀晴
国立病院機構松本病院 病理
中澤 功

 今回われわれは、子宮頸癌術後に異時性に脾および大腸転移を来たし、それぞれに対し切除術を行っ た1例を経験した。症例 57歳女性。既往歴 40歳時に左乳癌にて定型的乳房切断術。現病歴 平成 13年1月に子宮頸癌に対し、広汎子宮全摘術施行、SCC、non keratinizing、Stage IIaであった。 膀胱への浸潤を認めたため、術後骨盤内に50Gyの放射線照射が行われた。以後経過観察中であった が、平成14年2月の腹部CT検査で、脾下極に腫瘤を認められた。血液検査でCEAとCA125の軽度上 昇を認め、転移性脾腫瘍と診断した。全身検索ではほかに転移を認めず、脾摘術を施行した。病理組 織学的には扁平上皮癌で、子宮頸癌の転移と診断された。その後、婦人科でcisplatin+5- fluorouracilによる化学療法を3クール施行された。以後再発兆候無く、婦人科で経過観察されてい た。平成19年5月に右下腹部の違和感を訴え当科外来受診、右下腹部に硬い腫瘤を触知し、腹部CT検 査で上行結腸に腫瘤像を認めた。内視鏡検査では上行結腸にほぼ全周性の3型病変を認め、生検で GroupV(SCC)で、転移性大腸癌を疑った。通過障害を来す可能性が高かったため、手術を選択、 結腸右半切除術を行った。病理学的には扁平上皮癌で、子宮頸癌および脾転移の組織像に類似してお り、高分子cytokeratin陽性で、子宮頸癌の転移と診断された。術後に行ったPET検査では、左外腸 骨領域に集積を認めたが、CTでは腫瘤を指摘できなかった。そのほかには転移を疑わせる集積はな かった。子宮頸癌の脾臓、大腸への異時性血行性転移はまれであり、画像を供覧しつつ報告する。