日本消化器内視鏡学会甲信越支部

34.直腸癌術後膵転移に対し膵尾部切除術を行った1例

山梨大学医学部 第1外科
三井文彦、飯野 弥、森 義之、日向 理、藤井秀樹

 症例は62歳の男性.直腸癌の診断で、前医にて腹会陰式直腸切断術を施行された(Rb, SS, ly2, v2, n1, stageIIIa).術後TS-1が開始された。術後6ヶ月目のCTにて局所再発が認められたため、放射 線療法(60Gy)が開始され照射後2ヶ月のCTでは再発巣は消失した。術後8ヶ月からUFT/UZELが 開始された。患者の希望により術後1年2ヶ月後当科受診した。初診時CEA 15.6ng/mlと高値を示し ていた。CT施行し膵尾部に12mm大の結節様構造が観察され腫瘍性病変が疑われたが確定診断には 至らなかった。外来で経過観察を行っていたところ、CEA 57.9ng/mlと上昇し、CTで膵尾部の腫瘍 は15mmと増大し転移性病変が疑われた。また、PET-CTを施行したところ膵尾部にFDGの弱い集積 が認められ、右内腸骨リンパ節にもFDGの集積が認められた。直腸癌の局所再発、膵転移の診断で初 回手術から1年11ヵ月後膵尾部切除術、局所再発巣切除術、骨盤腔術中放射線照射(25Gy)を施行 した。病理所見では骨盤内病変は中分化管状腺癌であった。膵病変は骨盤内病変と同様な中分化管状 腺癌であり、リンパ節を示唆する構造も認められず、病変部周囲の主膵管、分枝膵管に異型が認めら れなかったため、直腸癌による膵転移が示唆された。術後はmFOLFOX6を2クール、FOLFIRIを1 クール施行したが、再手術から3ヵ月後に多発肺転移が認められた。大腸癌の膵転移は稀であり、過 去5年の剖検輯報によると大腸悪性腫瘍のうち膵転移を認めた症例は約5%であった。膵転移切除例に ついての報告は少なく、今回我々は直腸癌術後膵転移に対し膵尾部切除術を行った1例を経験したの で報告する。