日本消化器内視鏡学会甲信越支部

33.大腸全摘後、胃十二指腸炎および回腸嚢炎を併発した潰瘍性大腸炎の1例

新潟大学 第3内科
岩永明人、阿部聡司、青柳 豊1
新潟県立新発田病院 内科
姉崎一弥、夏井正明
新潟大学 分子・診断病理学分野
本間 照、味岡洋一
順天堂大学伊豆長岡病院 内科
杉山幹也、玄田拓哉

 大腸全摘術後、潰瘍性大腸炎類似の所見を呈した胃十二指腸炎を認め、同時に回腸、回腸嚢炎を合併 し、その緩解にステロイド投与が必要であった潰瘍性大腸炎(UC)の一例を報告する。 症例は56歳、男性。診断時(38歳)には盲腸と下行結腸〜直腸に活動性所見を認めた。再燃緩解を繰り 返しステロイド依存性となり、病勢は不安定であったが、入院が必要になるような再燃はなかった。 しかし、52歳頃からは全大腸炎型、ステロイド抵抗性となり、入退院を繰り返した。アザチオプリン 併用、白血球除去療法を施行したが、病勢は安定せず、55歳5月に大腸全摘術、J型回腸嚢肛門管吻 合術が施行された。手術までのプレドニゾロン総投与量は55gを優に超えていると推定された。術後 は排便回数10行/日程度であった。1ヶ月後から心窩部膨満感を自覚し、上部消化管内視鏡検査(EDG) にて十二指腸球部に輪状配列する多発びらんを認めた。PPIを開始し症状は軽快した。術後8ヶ月後 EDGで胃体部〜十二指腸球部にかけ白苔をともなうびらんが多発、UC関連胃十二指腸炎と診断しメ サラジン粉末を投与開始した。また、この頃から水様下痢10行以上/日となり、血便も出現し次第に 増悪。術後1年後CFでは回腸嚢〜回腸にかけて発赤浮腫状の粘膜に多発びらんを認めた。メトロニダ ゾールを投与したが改善みられず、プレドニゾロン20mgにて症状緩解した。緩解後の上部下部消化 管にはびまん性の発赤浮腫は消退していたが、回腸嚢にはやや広いびらんが数個残存していた。
 全摘後のpauchitisやgastroduodenitisが報告されているが、本例ではその両者がほぼ同時に観察さ れ、ステロイドにより緩解が得られた。UCを全身疾患として示唆する貴重な症例と考えられた。