日本消化器内視鏡学会甲信越支部

32.薬疹に対するステロイド使用を契機にサイトメガロウイルスによると考えられる肝障害及び腸炎を発症した1例

北信総合病院 消化器科
佐藤淳一、細川貴範、油井 薫、田尻和男

 症例は72歳男性。2007年5月7日より咽頭痛を認め市販の感冒薬を2日間服用したところ、5月12日 より両手に発疹が出現しその後全身に拡大してきたため、5月14日当院皮膚科を受診し感冒薬による 薬疹と診断され入院となった。プレドニン(40mgから開始し5月16日より60mgに増量)投与し発疹は 改善してきたが、5月17日黄疸を伴う肝機能障害が出現したため当科転科となった。肝機能はその後 速やかに改善し1ヶ月後にほぼ正常化したが、HBV,HCVマーカーは陰性でアルコール歴もなく、画 像上閉塞性黄疸や肝腫瘍も否定的で当初は原因不明であった。6月下旬になって肛門の奥の痛みを訴 えるようになったため6月27日大腸内視鏡を施行したところ、直腸Rbに孤立性小潰瘍の散在を認め同 部の生検よりサイトメガロウイルス(以下CMV)封入体が検出されCMV腸炎と診断した(全身検索の 結果、脳炎・髄膜炎・肺炎の合併はなかった)。ガンシクロビル200mg/日を2週間継続投与し、8月1 日大腸内視鏡を再検したところ孤立性潰瘍は全て消失しており8月9日退院となった。以上の経過より 肝障害についてもCMVの関与が疑われ、ステロイド使用を契機に肝障害及び腸炎を発症したものと 考え、報告する。