症例は72歳男性。2007年5月7日より咽頭痛を認め市販の感冒薬を2日間服用したところ、5月12日 より両手に発疹が出現しその後全身に拡大してきたため、5月14日当院皮膚科を受診し感冒薬による 薬疹と診断され入院となった。プレドニン(40mgから開始し5月16日より60mgに増量)投与し発疹は 改善してきたが、5月17日黄疸を伴う肝機能障害が出現したため当科転科となった。肝機能はその後 速やかに改善し1ヶ月後にほぼ正常化したが、HBV,HCVマーカーは陰性でアルコール歴もなく、画 像上閉塞性黄疸や肝腫瘍も否定的で当初は原因不明であった。6月下旬になって肛門の奥の痛みを訴 えるようになったため6月27日大腸内視鏡を施行したところ、直腸Rbに孤立性小潰瘍の散在を認め同 部の生検よりサイトメガロウイルス(以下CMV)封入体が検出されCMV腸炎と診断した(全身検索の 結果、脳炎・髄膜炎・肺炎の合併はなかった)。ガンシクロビル200mg/日を2週間継続投与し、8月1 日大腸内視鏡を再検したところ孤立性潰瘍は全て消失しており8月9日退院となった。以上の経過より 肝障害についてもCMVの関与が疑われ、ステロイド使用を契機に肝障害及び腸炎を発症したものと 考え、報告する。