日本消化器内視鏡学会甲信越支部

30.術前診断に難渋した盲腸癌の1例

山梨赤十字病院 外科
鈴木 学、後藤哲宏、中尾健太郎、大中 徹、大塚耕司
昭和大学藤が丘病院 外科
(後藤哲宏)、真田 裕
昭和大学病院 一般消化器外科
(中尾健太郎)、(大中 徹)、(大塚耕司)、角田明良、草野満夫

 今回我々は、術前にS状結腸癌と盲腸癌の多発大腸癌疑いで開腹手術を行い、盲腸癌のS状結腸直接浸 潤で単独癌であった症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。症例は61歳、男性。既 往歴に5歳時に虫垂炎腹膜炎手術以外特記事項なし。便通異常で当院内科受診。注腸検査でS状結腸に 約5cmに渡るapple core様の全周性狭窄を認め、S状結腸癌疑いで当院外科紹介となる。下部消化管 内視鏡検査でS状結腸にスコープ通過不能な全周性の狭窄を認めた。生検にてGroup5が認められ、S 状結腸癌と診断した。術前評価し、腹部造影CT検査では回盲部の全周性の壁肥厚と右下腹部の腹壁へ の癒着と肥厚したS状結腸との癒着が認めら、盲腸癌を強く疑わせる所見であった。内科施行時の注 腸検査写真を再検したが、回盲部は造影不十分で評価困難な状態であった。よって、S状結腸癌と盲 腸癌疑いの多発大腸癌疑いでS状結腸切除+回盲部切除術を施行した。肉眼病理学的検討では盲腸癌 が、S状結腸に直接浸潤している様式であった。現在、消化管癌の確定診断は内視鏡による生検組織 検査の結果によるところが大きい。画像診断では、疑いがあっても確定診断に至らせないことが多い。 特に癌腫が大きくなると原発巣の同定が困難な事が多い。しかし、手術の場合郭清等の問題で、原発 巣の同定が重要となる。本症例のように内視鏡のみに頼らず、複合的に診断を行って行くことが重要 と再認識させられた。