日本消化器内視鏡学会甲信越支部

29.腸重積をきたした早期盲腸癌の1例

国立病院機構長野病院 消化器科
森田 進、滋野 俊、中辻良幸、藤森一也
国立病院機構長野病院 外科
土屋拓司、鈴木一史、清水文彰、五明良仁
国立病院機構長野病院 研究検査科
前島俊孝

 症例は62才、女性。2007年4月4日頃より上腹部痛が出現した。腹痛は持続し4月6日より血便を伴 うようになり、4月7日当院を受診した。身体所見 体温 36.8 ℃、血圧 168 /100、脈拍60 /分。 胸部 異常なし。腹部 平坦 軟、腸雑音 正常、右下腹部に圧通あり 軽度反跳痛あり、腹部に腫瘤 は蝕知せず。血液生化学検査にて WBC 5600/mm3, CRP 0.6 mg/dl、CK 44 IU/l, LDH 193 IU/l, CEA 0.8 ng/ml, CA19-9 8.6 U/ml。腹部CT検査にて、腫大し同心円構造を呈した上行結腸 を認め、腸重積と診断した。また右側横行結腸内に表面凹凸不整の腫瘤がみられ腸重積の先進部と考 えられた。腹水、リンパ節腫大は認めなかった。大腸内視鏡検査では、横行結腸に表面凹凸不整腫瘤 を認め、また、腸重積の内筒がみられた。内視鏡からの送気にて腸重積は次第に解除され、盲腸に基 部を有する1型の大腸癌と診断した。翌日のガストログラフィンによる注腸造影でも横行結腸まで重 積した腫瘤を認めた。盲腸癌および腸重積の診断で、4月9日外科手術を行った。開腹時にはに重積は 解除されており、結腸右半切除およびリンパ節廓清術を行った。切除標本の肉眼像では、盲腸に亜有 茎性1型大きさ60×47×10mmの腫瘍が見られた。病理組織診断では、pap>tub2(carcinoma with adenoma component)、深達度 m 。INF α,ly0,v0。所属リンパ節転移なし。腸重積をきた した早期盲腸癌の1例を報告した。