日本消化器内視鏡学会甲信越支部

28.肝膿瘍を契機に発見された虫垂癌の1例

済生会新潟第二病院 消化器科
今井径卓、上村博輝、渡辺孝治、関 慶一、石川 達、太田宏信、吉田俊明、上村朝輝
済生会新潟第二病院 外科
坪野俊広
済生会新潟第二病院 病理検査科
石原法子

緒言:肝膿瘍は成因として,胆管炎などに伴う胆管経由,敗血症などに伴う肝動脈経由,消化管の炎 症に伴う門脈経由,腹腔内感染からの直接進展,肝外傷や肝転移に伴う2次感染などが挙げられる. 門脈経由の場合,虫垂炎や憩室炎など消化管の炎症に由来するものが多い.一方,大腸悪性腫瘍が原 因となる場合の多くは肝転移を伴った多発性肝膿瘍であり,転移を伴わない単発性肝膿瘍は比較的少 ないとされている.症例:65歳女性.2007年4月初旬より40℃台発熱,食欲不振が出現し,近医に て抗生剤投与されるも改善ないため,当科紹介受診した.来院時,血圧100/56mmHg,脈拍95回/ 分,体温38.3℃,右季肋部に圧痛を認めた.WBC 14900/μl,AST 202IU/l,ALT 188IU/l, CRP 35.39mg/dl,PT% 52.0%,CEA 2.2ng/ml,CA19-9<2.00U/ml.腹部CTにて肝右葉に 14cm大の蜂巣状腫瘤を認め,造影パターンから肝膿瘍と診断,右肋間および右肋弓下よりドレナー ジチューブを2本挿入し,抗生剤投与を開始すると,徐々に炎症所見は軽快した.肝膿瘍の原因検索 のため下部消化管内視鏡検査を施行,虫垂内腔より突出するIpポリープを認め,病理組織診にて Adenocarcinoma,tub1,と診断された.後日,腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行,粘膜内癌と診 断された.現在,術後4ヶ月であるが,肝転移,肝膿瘍の再発は認められず,経過良好である.考 察:今回われわれは肝膿瘍を契機に発見された虫垂癌の1例を経験したので文献的考察を加えて報告 する.