日本消化器内視鏡学会甲信越支部

27.回腸憩室穿孔の1例

山梨県立中央病院 外科
日向道子、羽田真朗、赤澤祥弘、白石謙介、古屋信二、古屋一茂、須貝英光、宮坂芳明、中込 博、三井照夫

 今回,我々が経験した回腸憩室穿孔の1例を報告する.症例は80歳男性.重度の僧房弁閉鎖不全にて, 当院で2007年5月15日僧房弁置換術を施行した.術後6日目より腹痛出現し,腹部CTで肝表面と肝 十二指腸間膜に沿ってfree airを認めた.十二指腸潰瘍穿孔を強く疑ったが,心手術後であり全身状 態が安定していたこともあって保存的治療を開始した.しかし翌日腹痛増悪し,腹部CTで腹水貯留, free airの増悪を認めた.上部消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断し,術後7日目に開腹手術を施行 した.開腹所見では膿性腹水が貯留しており,腸管全体に白苔が付着していた.バウヒン弁より約 20cmの回腸に穿孔を認めた.穿孔部周囲の回腸は赤色から紫色に変色しており,壁肥厚,硬結を認 めた為,穿孔部を含めて12cm腸管切除し洗浄ドレナージした.摘出標本では回腸腸間膜対側に13ヶ 所の憩室を認め,そのうち1ヶ所が穿孔していた.病理組織検査の結果,多発性回腸憩室と診断され た.回腸憩室は消化管憩室の中では稀な疾患であり,文献的考察を加え報告する.