日本消化器内視鏡学会甲信越支部

26.嚢胞状形態を呈した小腸GISTの1例

新潟県立十日町病院 外科
佐原八束、福成博幸、岡島千怜、樋上 健、設楽兼司、林 哲二

 症例は77歳男性で、1か月前より下腹部痛を自覚し当科受診した。臍下部から恥骨上にかけて圧痛を 伴う小児頭大の腫瘤を触知した。表面平滑、弾性軟で可動性は良好であった。CTにて嚢胞性部分主体 で一部不整な充実性部分を伴う12cm大の腫瘤性病変を認めた。確定診断には至らなかったが、小腸 由来の腫瘍と考え、開腹手術を施行した。腫瘍は下部小腸から発生し、小腸部分切除を伴う腫瘍摘出 術を施行した。腫瘍の嚢胞内容は褐色血性であり、腫瘍の腸管壁付着部には径5cm大の充実性成分を 認めた。また、腸間膜には米粒大の白色結節を多数認め、一部切除した。病理組織検査では Gastrointestinal stromal tumor of small intestine , high-grade malignancy , c-kit(+)と診断さ れ、白色結節は腸間膜播種であった。一年後CT上腸間膜に再発を認め、メシル酸イマチニブ 400mg/dayの内服を開始。副作用として嘔吐、下痢などの症状が強く出現したため、2ヶ月後からは 300mg/dayへ減量したが、内服開始から約3年後に新たな再発巣が出現。増大傾向であったため化学 療法によるコントロール不良と判断、手術にて大小合わせ計69ヶ所の播種巣を切除した。病理組織診 断はGastrointestinal stromal tumor , myogenic type , multiple nodule , recurrent , up to 80mm in size , c-kit(+) , CD34(+) , vimentin(+) , SMA(+) , desmin(+) , S-100(-)で前回と同様な 組織からなるGISTであった。その後は化学療法施行せず一年間無再発生存中である。GISTのうち、 嚢胞状の形態を呈するものは比較的まれである。今回われわれは嚢胞状形態を呈した小腸GISTの一例 を経験したので文献的考察を加え報告する。