【症例】症例1は64歳男性。平成12年6月近医にて体下部〜前庭部にH.pylori陰性胃MALTリンパ腫 と診断。平成13年1月放射線療法(30Gy)施行。治療評価はCRで、その後MALTリンパ腫の再発は認 めなかった。放射線療法1年8ヶ月後に照射野内のMALTリンパ腫が存在した胃角〜前庭部に腺癌 (tub1+tub2)が多発。EMR、APC後も再発を認めたため、平成18年3月22日当院にて腹腔鏡補助下 幽門側胃切除、D2郭清、B-I再建術施行。術後2日目にmajor leakageを合併したため、再手術にて B-II再建術を施行した。病理組織診断では、放射線照射による変化を生じた部位に腺癌病変を認めた。 症例2は80歳女性。平成11年11月近医H.pylori陰性の胃MALTリンパ腫と診断。除菌療法は副作用 のため中断し、エンドキサン(50〜100mg/day)による化学療法でPRとなり、維持療法を行ってい た。5年後、MALTリンパ腫が存在する胃角後壁に腺癌(tub1+tub2)が出現。前医にてMALTリン パ腫に対して放射線療法(30Gy)にてCRとなり、腺癌に対してはESD施行されるも断端陽性。ESD 1年後、同部位に腺癌再発し、APC施行されるも再発を認めたため、平成19年6月20日幽門側胃切 除、Roux-Y再建術を施行した。病理組織診断では、切除標本にMALTリンパ腫の再発を認めた。 【結語】両症例ともH.pylori陰性MALTリンパ腫であった。症例1ではMALTリンパ腫の放射線療法 による二次性胃癌であり、MALTリンパ腫に対する放射線療法後は二次発癌の発生に注意する必要が ある。また、放射線照射野内の臓器同士での吻合は縫合不全の可能性が高く、避けるべきである。症 例2はMALTリンパ腫に合併した胃癌で、H.pylori陰性例に合併したものは、本邦での報告は4例だけ であった。MALTリンパ腫では胃癌合併も念頭に置いた経過観察が重要である。