日本消化器内視鏡学会甲信越支部

22.R-CHOP治療中に頭蓋内転移による複視を生じた胃原発malignt lymphoma の一例

信州大学附属病院 第2内科
竹中一弘、金子靖典、武田龍太郎、須藤貴森、児玉 亮、長屋匡信、市川真也、張 淑美、松田賢介、高山真理、新倉則和、赤松泰次、田中榮司

 症例は38歳男性.平成18年3月より胃潰瘍(他院生検:group II)にて加療され、H-pylori 除菌療法 を行われていた.同年6月より心窩部痛・労作時呼吸苦を自覚したため他院受診.Hb 5.6mg/dlと貧 血を認めたため入院となった.上部消化管内視鏡検査を施行したところ、前庭部から体下部小弯側に 粘膜下腫瘍様の変化を伴う巨大潰瘍病変を認め、周囲にも多発する小潰瘍を認めた.同部生検にて malignant lymphoma(diffuse large B cell lymphoma)と診断され、7月当科紹介受診され入院と なった.入院後の検査にて、腸骨への浸潤を伴うstage IVの胃原発malignant lymphomaと診断し、 7/14よりR-CHOP療法を開始した.R-CHOP 2クール終了した頃より、左眼窩痛・複視(左眼球外転 障害)・左眼瞼下垂を自覚するようになった。R-CHOP 3クール終了時点で施行したPETにて、胃病 変の縮小は認めるものの、他部位(肺・頭蓋骨・両肩・左上眼窩裂)への集積を認めた。このため化学 療法をR-CHOP療法からR-hyper CVAD療法へ変更し、R-hyper CVAD療法を3クール施行した。 複視は改善し、画像上も腸骨・左眼窩裂の病変の消失を認めた。しかし胃・脾臓に残存病変を認め、 自家造血幹細胞移植の方針となった。H19年1月にLEED療法を施行し、自家造血幹細胞移植を施行 された。これにより完全寛解が得られ、現在再発等を疑わせる所見なく経過している。今回、R- CHOP治療中に頭蓋内転移による複視を生じた胃原発malignt lymphomaの一例を経験したので報 告する。