進行胃癌に対する1st lineでのS-1+Paclitaxel併用化学療法の臨床成績について検討した。対象は、 手術適応のない進行胃癌であり、化学療法の既往がない計51例とした。肝転移やリンパ節転移病変の 治療効果を判定し、最良総合評価、奏効率(FF)、全生存期間(OS)、無再発生存期間(PFS)、治療成功 期間(TTF)、生存期間中央値(MST)を求めた。また治療開始前に判断可能な臨床的特徴の差異による治 療効果について検討した。S-1+Paclitaxel全体の治療成績では、FF 47.1%、OS 13.2ヶ月、PFS 8.8ヶ月、TTF 7.1ヶ月、MST 13ヶ月であった。差異の見られた臨床的特徴のうち、肉眼型、転移 形式、組織型の3項目を分類の指標として、高分化群、低分化群に分類し、各群において治療効果を 比較検討した。奏功率において、高分化群がχ2検定(α=0.05)により有意に高値であった。また、 24ヶ月以上の長期生存例は低分化群にのみ認められた。51例全体としては、今まで報告された成績 と比しほぼ遜色ない治療効果と考えられた。分化度に基づく分類では高分化型に有意に奏効率が高く、 また生存期間中央値も長期であった。しかし長期生存例は低分化群に多く認められ、低分化群にS- 1+Paclitaxel治療の著効となる症例が存在する可能性が示唆された。