【緒言】左側門脈圧亢進症は稀な病態である。背景には様々な疾患が認められ、その病態により予後 も一様ではない。したがって画一的な治療ではなく、総合的な評価のもとに治療方針を決定する必要 がある。当院では脾静脈閉塞に伴う胃静脈瘤4例を経験したので、文献的考察を加え報告する。【症 例1】慢性膵炎のため入退院を繰り返す41歳、男性。吐血のため当院に搬送され、胃静脈瘤破裂と診 断された。CTでは脾静脈の閉塞が認められ胃静脈瘤の原因となっていた。再出血の危険性が高く、脾 摘出術、胃部分切除を施行した。【症例2】57歳、男性。以前より血小板増多を指摘されていたが無 治療であった。胃癌検診の上部消化管造影で異常を指摘され、上部消化管内視鏡にて胃静脈瘤と診断。 CTにて脾静脈閉塞が判明し、その原因として血小板増多症を背景とした特発性の静脈血栓症と考えら れた。RCサイン陽性であったため、予防的に脾摘出術、胃上部血行遮断術を施行した。【症例3】47 歳、男性。重症急性膵炎の既往があり、深部静脈血栓症により肺塞栓を発症しIVCフィルターが留置 されている。胃癌検診の上部消化管造影で穹窿部から体部の巨大レリーフを指摘され、上部消化管内 視鏡で胃静脈瘤を認めた。CTでは脾静脈が閉塞していた。胃静脈瘤に破裂の徴候はなく、未治療にて 経過観察中である。【症例4】66歳、男性。切除不能膵癌にてゲムシタビン投与を開始。初診時すで に脾静脈への浸潤を認め、14ヶ月後に胃静脈瘤の出現を指摘された。原疾患からは予後不良と考えら れたが、SD状態が継続しADLも良好に保たれていた。胃静脈瘤の急速な増大を認めたため、十分な インフォームドコンセントの後、予防的PSEを施行、改善を認めた。【結語】脾静脈閉塞に伴う胃静 脈瘤症例では、個々の背景疾患が多種多様であることから、多角的な検討を加え診療を進めることが 重要である。