【はじめに】胃静脈瘤の治療はB-RTOの開発により大きく進歩した。しかし、胃腎シャントが明らか でない症例では、まだまだ治療に難渋することがある。今回われわれは、2回のPTOにより良好な治 療効果を得た胃静脈瘤の1例を経験したので報告する。【症例】66歳、男性。【主訴】タール便【既 往歴】26歳 十二指腸潰瘍手術(Billroth II法)【経過】1999年から非B非C肝硬変のため近医通院。 2006年12月吐下血を生じ、胃静脈瘤破裂と診断され、当科へ紹介。初診時の上部消化管内視鏡検査 では、胃噴門部から穹窿部にかけて、白色血栓とRCを伴う胃静脈瘤の発達を認めた。CT上、左腎静 脈に流入する太い血行路を認めたことから、B-RTOを試みたが、脾腎シャントは認めるものの胃静脈 瘤への交通は見られず、B-RTOは施行できなかった。内視鏡的治療では一次的な止血効果しか得られ ないと考え、直接側副血行路にアプローチする方法としてPTOを施行した。肝左葉外側区から穿刺し、 脾静脈にカテーテルを進め造影したところ短胃静脈を介する側副血行路の発達を認めたため、塞栓術 を施行した。4ヵ月後再び胃静脈瘤の増悪・出血を認め、再度、PTOを施行、短胃静脈を介する側副 血行路の発達に加え、空腸静脈を介し、残胃に流入する側副血行路の発達を認め、塞栓術を施行した。 PTOにより主たる流入路を絶った後、残存する胃静脈瘤に対しヒストアクリル併用硬化療法を追加し、 胃静脈瘤の縮小を得た。【考察】PTOは1980年代に多く行われた治療法であるが、内視鏡治療の進 歩やB-RTOの開発により、手技の煩雑さや安全性から、行われる機会は少なくなった。しかし、腹水 や凝固能低下症例などの禁忌症例を除いては、出血静脈瘤へ確実に近づくことができる手技であり、 内視鏡止血困難例では検討すべき手法の一つと考えられた。