日本消化器内視鏡学会甲信越支部

14.特殊光観察を施行したCollagenous gastritisの1例

佐久総合病院 胃腸科
岡本耕一、小山恒男、宮田佳典、友利彰寿、堀田欣一、高橋亜紀子、北村陽子、古立真一、松村孝之、吉田 晃、田沼徳真、米田頼晃、大瀬良省三

 Collagenous gastritis(以下CG)はCollagenous colitisと同様、表層上皮直下のcollagen band(以 下CB)と粘膜固有層の細胞浸潤を特徴とする疾患で、現在まで海外報告例を含めて約30例弱、本邦 報告例は2例のみという極めて稀な疾患である。今回我々は特殊光観察を施行したCGの1例を経験し たので報告する。症例:35歳、男性。現病歴:人間ドックでの上部消化管内視鏡検査にて胃内に多発 性の褪色調陥凹病変を指摘された。内視鏡所見:胃体上部小弯、胃体中部大弯、胃角部大弯、前庭部 大弯に境界不明瞭な褪色調陥凹性病変を認めた。褪色陥凹内には顆粒状から結節状の大小不同の隆起 を認めた。インジゴカルミン撒布像でも陥凹境界は不明瞭であり、蚕食像は認められなかった。NBI 拡大観察では陥凹部の血管の口径不同、走行不整は軽度であり、低分化腺癌やリンパ系腫瘍に認めら れる不整血管とは異なっていた。また、陥凹内の隆起部にはsmall roundの規則正しいpit構造を認め た。AFI観察では褪色陥凹部は緑色に認識され、陥凹内の隆起部は紫色を呈していた。また、超音波 内視鏡観察では層構造に異常を認めなかった。H.pyloriは生検、血清抗体にて陰性であった。内視鏡 にて陥凹内の褪色調領域、陥凹内の隆起部、正常粘膜と認識された部位より生検を行った。陥凹部の 褪色調領域から採取された生検標本にて、間質には好酸球、リンパ球、形質細胞浸潤を認め表層上皮 直下に30〜100μmの好酸性物質を認めた。Azan染色陽性、Congo赤染色陰性でありCBと診断し た。本症例は通常観察ではMALTomaなどのリンパ系腫瘍との鑑別が問題であり、AFIも質的診断は 困難であった。一方、NBI拡大観察で認められた血管の口径不同、走行不整は軽度であり、NBI拡大 観察は低分化腺癌やリンパ系腫瘍との鑑別に有用であった。