日本消化器内視鏡学会甲信越支部

13.好酸球性胆嚢炎を伴った好酸球性胃腸炎の1例

JA長野厚生連富士見高原病院 外科
安達 亙、岸本 恭、塩澤秀樹
JA長野厚生連富士見高原病院 内科
小松 修

 好酸球性胃腸炎は比較的まれな疾患であり、特異的な所見に乏しく診断に難渋することが多い。本疾 患は消化管を侵す疾患と考えられており、好酸球浸潤を主体とした胆嚢炎の合併の報告は少ない。今 回、好酸球性胆嚢炎を伴った好酸球性胃腸炎の1例を報告する。
 症例は57歳、男性。主訴は腹痛。既往歴に喘息、アスピリン不耐症、副鼻腔炎あり。現病歴:約1ヶ 月前より腹痛、下痢が出現し、症状が続くため近医に入院した。十二指腸炎を指摘されて抗潰瘍治療 を受けたが症状が軽快しないため当院に入院となった。食後の腹痛が強く、入院までに約10kgの体 重減少を認めた。理学的には特記する異常所見は認められなかった。血液検査上、好酸球増多を認め た。MRI検査で胆嚢炎と診断され、胆石の存在も疑われたため腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。術中 所見から胆嚢炎と診断したが胆石は認められなかった。術後も強い腹痛が持続したためERCと上部消 化管内視鏡検査を施行したところ十二指腸および胃に多発性のビランを認めた。ビランの生検を行っ たところ強い好酸球浸潤を認め好酸球性胃腸炎と診断された。また、摘出した胆嚢にも好酸球を主体 とした炎症細胞浸潤を認めたため胆嚢病変も好酸球性胃腸炎に付随した病変と考えた。本症と診断後、 プレドニゾロンの内服を開始したところ症状は消退し、内視鏡的に胃十二指腸病変の改善を認めた。