日本消化器内視鏡学会甲信越支部

11.前立腺癌胃転移の1例

山梨大学 第1内科
廣瀬純穂、植竹智義、吉田貴史、横田雄大、末木良太、門倉信、三浦美香、山口達也、大塚博之、大高雅彦、佐藤 公、榎本信幸

 症例は60歳男性。2002年5月近医での上部消化管内視鏡検査にて早期食道癌を指摘され、当科を紹 介され同年7月第1回目入院後EMR施行。外来経過観察中の2004年11月、早期食道癌の異所性再発 を認め、2005年3月に第2回目入院しEMR施行。2007年6月上部消化管内視鏡検査にて、胃体上部 小彎に直径5mmの粘膜下病変および胃噴門部直下大彎に直径5mmの隆起性病変を認めた。超音波内 視鏡上、両病変とも粘膜3層内にとどまるややhypoechoicで境界明瞭な腫瘍であった。病理組織学 的検索では低分化腺癌であったため、転移性胃癌も疑い全身検索を行なった。CT検査上、前立腺は辺 縁不整であり、内部は不均一な造影効果を認め、前立腺癌が疑われた。椎体の骨転移疑いを認めたが、 肺や肝などへの転移は認めなかった。腫瘍マーカーはPSA 110ng/ml(<3.5) と高値であった。前立腺 生検組織では、胃生検結果同様の低分化腺癌と形態的な類似性を認め、追加検討した免疫組織学的で はPSA染色で胃生検組織は強陽性を示した。以上より前立腺を原発とした転移性胃癌と診断。2007 年7月より、LH-RH系前立腺癌治療薬(ゾラデックスR)にて通院治療を開始した。9月の上部消化管内 視鏡検査での腫瘍縮小効果より奏効していると考えられ、今後も治療を継続する予定である。
今回、胃へ転移した前立腺癌の稀な症例を経験したので、文献的考察も合わせて報告する。