【目的】近年、早期胃癌の増加に伴い機能温存手術としてPPGを行う機会が増えているが、時々術後 に残胃の癌を経験する。今回、当院で経験したPPG後の残胃の癌について臨床病理学的特徴と治療成 績を検討した。
【対象】1993〜2006年末までの幽門保存胃切除術(PPG)338例中の明らかな再発・遺残例を除 いた残胃の癌8例(2.4%)である。
【結果】男性6例、女性2例であり、再手術時の年齢中央値は66歳(56〜76歳)であった。残胃の癌 が治療されるまでの介在期間は37.8か月(6〜120か月)であった。初回病変はpM癌3例、pSM癌5 例であり、そのうち初回多発病変は1例であった。残胃の癌の発生部位はU領域5例、L領域3例(@ Post, 0-IIc, tub1, pSM1, AGre, 0-IIc+IIa, tub1, pM, BPost, 0-IIc+IIa, tub1, pM)。肉眼型は 隆起型3例、陥凹型5例であった。治療法は残胃全摘7例、EMR1例であり、全例が無再発生存中であ る。残胃の癌の組織型は高分化型7例、低分化型1例であり、深達度はpM癌5例、pSM癌2例、pMP 癌1例であった。リンパ節転移はpMP癌の1例に認められpN1(No.2)であった。
【結語】早期胃癌に対しQOL向上を目標とした機能温存縮小手術後に、定期的に内視鏡検査を行うこ とで残胃の癌の早期発見、根治的治療が可能であった。しかし、初回多発病変や介在期間の短い症例 は初回手術時の見逃し病変であったと思われ、術前内視鏡検査の診断精度を上げる努力がさらに必要 である。