日本消化器内視鏡学会甲信越支部

7.A型胃炎に伴う悪性貧血に多発早期胃癌を合併した1例

長野市民病院 消化器科
彦坂吉興、長谷部修、須藤桃子、武藤英和、立岩伸之、越知泰英
長野市民病院 内科
木寺奈織子、山崎誓一
長野市民病院 病理
保坂典子

 症例は79歳女性、主訴は食欲不振、めまい。H19年3月頃から黒色便。5月20日頃からめまい、食欲 不振を認めたため5月24日当院内科受診。血液検査でRBC 164万、Hb 5.9g/dl、Ht 18.1%と高度 貧血を認めたため精査加療目的に入院となった。貧血は大球性高色素性であり、Vit B12の低下、葉 酸軽度低下、抗胃壁細胞抗体(+)、抗内因子抗体(+)、ガストリン 1200pg/ml、ペプシノーゲン T/U比 0.7よりA型胃炎に伴う悪性貧血と診断した。5月24日の上部消化管内視鏡検査では胃体部を 中心に5〜30mmの過形成性ポリープを約40個認め過形成性ポリープが貧血の一因となっていると考 え6月12日内視鏡的ポリペクトミーを施行した。比較的大きなポリープを19個切除したところ病理組 織学的には18個が過形成性ポリープに合併した多発性早期胃癌(tub1、m、ly0、v0)であった。7月 24日残存ポリープを20個ポリペクトミーしたが、残存ポリープにもki67、P53染色で粘膜癌と考え てよい所見がみられた。尚Hp-IgG抗体<3、UBT 1‰でヘリコバクター陰性であった。貧血はVit B12投与により改善がみられている。
A型胃炎に伴う悪性貧血に合併した胃癌の報告は1983年〜2007年までの医中誌の検索では6例のみ であり、本例のように過形成性ポリープに合併した多発性早期胃癌の形態はきわめて稀と考え報告す る。